空色なキモチ

□ 満月の夜に見る夢は □

満月の夜に見る夢は 第4章 第48夜

「いーち! にぃーい! さぁーん!」


 みゅうちゃんと入浴中、湯船に浸かって数を数える高い声が浴室に反響する。
 お肌つるんつるんでお湯に浸かっている部分が桃色になっててほっぺも赤らんでいてかわいい。


「みゅうちゃん、もう数数えられるんだ。偉いね」

「うん! あれ? んー? いーち! にぃーい!」


 数えていた数を忘れてしまったようだ。声をかけたから悪いことしちゃったな。
 あれ? みゅうちゃんがわたしの方をじっと見てる?
 まん丸の目に刺されるように首元を見られている気が…。


「ゆきおねーちゃん、おはなさいてるよ。ここ!」


 首筋を指差されハッとなる。
 もしかしてお花ってキスマークのこと?
 そっか、今日ハイネック着てたから自分でも気づかなかったんだ。
 慌てて手で覆うと、みゅうちゃんがきょとんとした。


「お花かあ……」


 かわいい表現だなと思って思わず笑みがこぼれてしまう。
 あとで翔吾さんに文句言ってやらなきゃ。こんな恥ずかしい思いさせて……だけど見られたのがみゅうちゃんでよかったと少しだけホッとしてしまった。


「ママもね、よくさいてるの。それなーにってきいたらおはなだっていわれたの」


 うわあ、みゅうちゃんのママよくキスマークつけてるんだ。
 みゅうちゃんのママならまだ若いだろうしね……もしかしたらわたしとそう変わらない年かもしれない。


「どうしておはなさくの? みゅうはないよー?」


 うっ! その質問っ!?
 ママに訊いて、とも言えず……どうしよう……。


「えっとね……それはね……」


 興味津々顔のみゅうちゃんがじいーっとまん丸の大きな瞳でわたしの顔を見つめてる。
 これはキスマークと言って、強く吸われるとこういう痕がつくの……だなんて言えないっ! 言っちゃいけないっ!
 ふるふると首を振って頭の中をクリアにしようとするけどいい返答が浮かばないっ。


「……しょーくんに訊いて?」


 結局何も浮かばずそう答えると、みゅうちゃんはぷくっと頬を膨らませた。
 だって、つけたのは翔吾さんだもんっ! そのくらいの犠牲は受けてもらわないと……。






「ほら、みゅう、来い!」


 浴室の二枚扉を開け、翔吾さんがバスタオルを広げてみゅうちゃんを抱きしめる。
 みゅうちゃんが身をよじりながら翔吾さんにごしごし拭かれるのを浴槽に浸かりながら見ていた。


「きゃー♪」

「十まで数えたか?」

「うんっ! しょーくん! ゆきおねーちゃんなんでおはなさいてるのっ?」

「はあ?」

「ここんとこおはなー! ゆきおねーちゃんがしょーくんにきいてっていったの!」


 うわ! すぐ訊いちゃった。忘れてくれればよかったのにーっ。子どもの記憶力侮れないっ。
 笑ってごまかすけど、翔吾さんに上目遣いで見つめられた。怒られるかな? と思ったけど目を細めて笑顔を向けられた。なんで?

 その優しい視線はすぐにみゅうちゃんへ向けられる。


「みゅうも大きくなればわかるよ」

「ぷん! いましりたいの!」

「んー……それはね、しょーくんがゆきお姉ちゃんを大好きだから、かな?」


 ちらっとこっちに流し目を送って臆面もなく言いのける翔吾さん。
 うっ……全身がカッと熱くなってしまった。
 そんな色情を含んだ目で見るなんて卑怯だ。逃げ場がないのに……。


「なんで? しょーくんがゆきおねーちゃをすきだとおはなさくの? みゅうにはないよ? しょーくんみゅうのことすきっていったでしょ!?」


 出た! “なんで”攻撃! 子どもってこういうの多いよね。一度疑問に思ったら訊き続けるの。
 翔吾さんはなんて答えるのかな?


「みゅうも大きくなって大切な人ができたらわかるんだよ」


 そう言いながらみゅうちゃんをひょいっと抱き上げると自分の肩にもたれかけさせてぽんぽんと後頭部を撫でた。

 うわあ、上手く丸め込んだ? 子どもの扱い慣れてるな。
 身近にいるとああいうふうになれるもんなのかな。
 翔吾さんなら自分の子どももああやってかわいがりそうだな……と思ってしまった。





 髪を乾かしてリビングへ戻ると、寝室から翔吾さんとみゅうちゃんのはしゃぐ声が聞こえてきた。
 高い透き通るような賑やかな笑い声と、翔吾さんの低いバリトンが混ざり合っている。
 

「みゅうがまんなかでっ! しょーくんはそっち!」

「なんだよ、みゅう端でいいだろ? 俺が真ん中」

「いやー! みゅうがまんなかだもん!」


 寝室を覗くとみゅうちゃんがベッドの真ん中で仰向けになって足をバタつかせている。
 翔吾さんがみゅうちゃんの左隣に片肘をついて寝そべっていた。


「あー♪ ゆきおねーちゃんここっ」


 わたしの存在に気づいたみゅうちゃんが自分の右隣のベッドの空きスペースをポンポンと叩いた。
 ベッドが大きいし、みゅうちゃん小さいから三人で寝れないことはないけど、大丈夫かな?
 それこそ夜中みゅうちゃんを蹴っ飛ばしてしまうんじゃないか心配だな……自分の寝相ってわからないし。



 翔吾さんがお風呂に行ってる間、みゅうちゃんにせがまれて絵本を読んだ。
 懐かしいなあ。星の王子様だあ。昔大好きだったんだよな……。
 自分も読んでもらって寝ついていたっけ……。読んでくれたのは決まって父だった。


 ずきん。


 胸の奥が針で刺されたような痛みを感じる。
 
 だけどそれに気づかないフリをして読み続けていると、みゅうちゃんはすぐ眠ってしまった。
 昼間遊び疲れちゃったのかな? また天使のみゅうちゃんを見れてなんだか心が暖かくなってしまう。
 わたし、思っていたより子ども好きなのかもしれない。この子が人見知りしないでくれているおかげだろうけどね。






「――――ん……」


 そっと髪を撫でられている感触。
 わたしの嫌いな……でも、翔吾さんは好きといってくれている髪。
 何度も梳かれ、優しく頬を包まれ……口角に触れると迷いなく指がわたしの唇を割る。


「ぬぅ?」

「起こしちゃった?」


 翔吾さんがわたしの身体に覆い被さった状態でいた。
 いや、普通口に指突っ込まれれば目も覚めるってもんだ。みゅうちゃんに本を読んでて自分も寝ちゃってたんだ。
 上に圧し掛かっている翔吾さんの手がわたしのパジャマのボタンにかかる。びっくりして翔吾さんの顔を見ると、優しげに微笑みながらも目の奥にはいつものように欲を孕ませていた。


「なにしてるんですか? みゅうちゃんがいるの……に?」


 わたしのとなりにピッタリ寄り添って眠っていたはずのみゅうちゃんがベッドの左端に寄せられていることに気づく。
 

「ちょっ……あんな端に……ベッドから落ちたら……」

「大丈夫、みゅうは寝相いいんだ。その上、一度寝ると滅多に起きない」


 月明かりに照らし出された翔吾さんの顔がニヤリと妖艶に微笑む。
 まるでドラキュラに襲われているヒロインの気分になり、胸が高鳴ってしまった。
 そうじゃない! 子どもの前でこんな……望んでないのに!

 首筋を唇が這い、耳朶を甘噛みされる。


「ん! だめっ……」

「大きい声出すと起きちゃうよ。トーン落として」


 耳の中に直接吐息混じりの掠れた甘い声が吹き込まれる。
 だったらやめてほしいのになんでこんな日まで……。

 パジャマのボタンをすべて外され、徐にブラの上を大きな手のひらが動き、強弱をつけて揉みしだかれた。
 その場所はわかってますよと言わんばかりに先の硬くなった部分を刺激するように押され、身体が跳ねてしまう。


「――や!」

「ほら、声だめだって……静かに」

「やめて……今日は静かに寝よう……」

「ダメ、俺が寝られない。こんなだもん、もう」


 わたしの手首が掴まれて、乗り上げている翔吾さんの大事な部分へ誘導される。
 あ……やだ、すごく硬くて大きくなってる……。
 

「雪乃のせいなんだからちゃーんと元の状態に戻してもらわないとね。今日は『おはな』つけないように気をつけるから……」


 嘘っ! わたしのせいなんかじゃないのに! ただの言いがかりじゃないのよ。
 揶揄るようにみゅうちゃんの口ぶりを真似する翔吾さん。そんなことでで言いくるめられないつもりだったのに、自然に背中にまわされた手がブラのホックを器用に外して胸がさらけ出されてしまった。
 その途端、指先で先端を弾かれて全身に電流が走ったかのように甘い痺れが伝う。


「っく!」

「かわいい。声我慢してるんだ?」


 わたしの反応を楽しむかのように翔吾さんの攻めがエスカレートしていく。
 わき腹に口づけされ、舌が這うともう震えてしまう。くすぐったさも手伝って全身がブルブル震えてしまう。
 指先はもうわたしの下半身を捉えていて、核の部分をわざとずらしてゆっくり触れていく。
 指が突き立てられた感覚に、全身を強張らせるとすぐに水音が聞こえだした。


「あ、もうこんなに濡れてるんだ?」

「言葉にしないで……」

「すごいよ。まだここ触ってないのに」

「――――っぁ!」


 いきなり核を指の腹で押しつぶされるように触れられ、ベッドの上で激しくのけぞってしまった。
 この振動でみゅうちゃんが起きちゃったら……と急に不安になってそっちに視線を向けると、よく寝ているみたい。安心したけど……声が我慢できそうにない。


「も……やめてえ……お願い……」

「ん、受け入れ準備できてるみたいだしね」

「意地悪……っ」


 哀願してもまったくやめようとしない翔吾さんに唇を噛みしめて訴えるけど、整ったその表情でにんまり笑われ、あっさりかわされてしまった。
 本当に意地悪だ。イケメンだからって何でも許されると思って……。
 
 すぐに翔吾さんが自身を宥めるように撫ぜながらわたしのすでに潤っている孔に宛がう。
 馴染まされるよう擦られた後、探るように挿入された。


「――――んっ!」


 ぎゅっと目を閉じて受け入れる。
 まだ最初は少し痛い。それをわかっているから、翔吾さんは少しずつ進んでいく。
 わたしの様子を伺うように、たぶん情欲の熱を帯びたままの瞳で見つめられているんだろうなって容易に想像ができた。

 いつもは閉じたままの目を、少し開いてみる……と。

 切なそうな表情の翔吾さんの前髪が月明かりとシンクロして翳を落としていた。
 その姿が妙にキレイで……わたしの身体はそれだけでビクビクと蠢いてしまう。
 まるでモノクロの世界を見ているみたい……。


「雪乃……」


 悩ましげな声で名を呼ばれ、視線を合わされてしまうともう理性が吹き飛びそうになってしまった。
 すごく綺麗だって思った。

 もっと激しくして……。

 急にそう願ってしまった自分が恥ずかしくて、でも本心で。

 そんな思いをかき消すように、無我夢中で翔吾さんに抱きついた。
 思いが伝わったのか、翔吾さんの律動が激しさを増す。互いの激しい息遣いが部屋を支配するようだ。

 耳元で何度も名が呼ばれ、愛してると繰り返され――
 

 
 いつの間にかわたしは意識を失っていた。


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Date:2013/02/13
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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