空色なキモチ

□ 満月の夜に見る夢は □

満月の夜に見る夢は 第3章 第42夜

 
 十五階の重役室フロアから階段で連れてこられたのは地下一階の資料室。
 さすがに下りでもこれだけ下りてきたら足がだるい。

 ここは、初めて翔吾さんに飲みに誘われて、メアドを渡された場所。

 ここは鍵がないと開かないのに。

 そう思っていた、ら。目の前で鍵が開けられた。
 うっ! なんで資料室の鍵を翔吾さんが持っているの? 
 少し乱暴に背中を押され、資料室に押し込まれた後、背後で内鍵を閉める音がした。


「え? なんで……鍵?」

「昨年度の搬入実績を確認したいって言って係長に借りた。問題あるか?」


 しれっと翔吾さんが答えてスーツのポケットにそれをおさめた。
 いや……それなら頼んでくれればわたしが調べて報告するのにって! ちっがーう!


「そうじゃなくて! なんで中から……」

「邪魔が入らないように?」


 ……邪魔って?

 なんだか嫌な予感しかしないんだけど……。




 あれよあれよという間に資料室の最奥の壁の角っこに追い詰められてしまった。
 ここ! 完全外の扉から死角だしっ! 廊下に人が通っても見つけてもらえないし!

 イコール誰も助けに来ない状態……。


「さて、話を聞かせてもらおうかな?」


 わたしを挟み込むように翔吾さんの両手が壁に押し付けられた。
 わーん! 囲われたあ! 逃げ道がないし!

 
 翔吾さんの嗜虐心が一瞬顔を覗かせ、目を細めて玩弄するような視線をわたしに向けている。
 その瞳の奥には情欲の色が……見えた気がした。
 これは……まずい!


 そう思った時にはすでに遅い。


 顎を掴まれ強引に上を向かされ、言葉を発する間もなく唇を塞がれた。
 すぐに翔吾さんの胸を押しやるけど、びくともしない。

 それどころか身体と身体の距離を縮められ、両手首の自由を奪われた上に壁に押さえつけられた。
 暴れようにも身体も身体で押さえ込まれてどうにもならない。


 軽く唇を噛まれ、開かされると舌が捻じ込まれる。
 こんなに荒っぽいキスは初めてだった。
 いつもは優しさとうれしさと快感をもたらす行為なのに……今日は違う。


 熱い……湧き出る泉が決壊したような愛欲をぶつけるだけのもの。


 ふわっと胸を包まれるような感触がした。
 離れない唇があたしの言葉を奪う。まともな思考さえ奪っていく。
 優しく何度も円を描くように撫ぜられた後、強く掴まれた。
 ビリリと走る痛み。でも、いやじゃない。

 そんな刺激さえ、わたしの身体は忠実に悦びとして拾い上げる。
 だけど心と身体はは裏腹で、ううん……本当は心も悦んでいる……みたいだ。

 抵抗らしい抵抗ができないのが、確たる証拠――

 そんな自分に気がついてしまい、恥ずかしくて一気に体温が上昇した気がした。身体中が火照るように熱い。


 気づいたらブラウスのボタンに手をかけられ、ベストのボタンも全て外されていた。
 キャミソールの胸が露わになり、その上から再び揉みしだかれる。

 こんなところ……鍵が閉まってても万が一誰かに見られたらっ。


「ん……くっ」


 わたしの喘ぎ声はすべて翔吾さんの口に吸収されていく。
 発することすら許されない、その快感に身体は敏感に反応するのに。
 ついにキャミもブラもたくし上げられ、硬くなってしまっている胸の中心を指の腹で捏ねられた。


「んんーっ! んくっ!」


 その刺激に耐えられなくて翔吾さんの唇越しに叫んでしまった。
 ベロリと唇を舐められ、解放される。


「もうこんなに硬くしてるんだ……」

「だ……って」

「じゃ、こっちももう……」

「ひゃっ!」


 太腿を下から上へ撫でられ、タイトなスカートを持ち上げられる。
 それだけで自然に腰が動いてしまう自分が恥ずかしくて、目を閉じると耳朶を甘噛みされた。
 そこから伝わる甘い刺激が全身に駆け巡り、かあっと熱くなる。

 それなのに、容赦なく翔吾さんの指がストッキング越しに秘裂をそっと撫で上げた。


「ああああッ!」


 それだけで軽く達してしまう。
 その部分が濡れてしまっているのを自覚した。


「ひぐっ……ひどい……なんで……」


 羞恥に震えながら左へ顔を背けて涙を流すと、右耳に柔らかいものが当たる。
 それが唇だって気づくのにそう時間はかからず、ぬちっと暖かい舌が滑り込んできた。


「っ!」

「耳、弱いよね」


 じゃあなんで攻めるの! しかも舌でとかひどいっ。
 手はそっとパンストのラインをなぞり続けてる。これ以上触れられたら下着が……。


「も……やだ……お願い……」

「ギブ?」


 コクコクうなずくと、顔を近づけられてニコッと微笑まれた。
 手はわたしの顔の両サイドの壁につけられて、逃がそうとはしてくれない。非情だ!
 身体はすでに火照っていてどこを触られても敏感な状態になっている。

 社内でこんなことをしているという思いが余計に感情を昂ぶらせる気がした。


「エロい顔」

「――っ!?」


 誰がそうさせたのよっ! そう言いたかったけど言えなかった。
 翔吾さんの目はもう獲物を捕らえた獣みたいになっていて、その眼力だけで言葉を遮られてしまう。
 顔から火が出るんじゃないかってくらい熱い……。

 ぼうっとしていたら、スカートがたくし上げられて、ストッキングとショーツが当たり前のように下ろされてしまう。
 だけどわたしの身体はまるで力が入らずに動けなかった。まるで骨が抜かれてしまったよう。


 こんなことしちゃいけないのにって思ってるのに……。

 でも、もっとしてほしいって心のどこかで思ってた。
 翔吾さんの言うとおり、わたしはいやらしい女なんだって思えて恥ずかしかった。
 

 そのまま壁際の低い棚の上に座らされ、足の間に翔吾さんの身体が割り込んでくる。
 じっと目を見つめられてそれだけで身体が疼いてしまう。
 わたしの入口に翔吾さんの硬くて熱い猛りが押し当てられ、一気に挿入された。


「っ! ああっ!」


 こんなふうに扱われてもわたしは悦んでいる。
 唇から、舌からそして下半身から伝わる激しい熱にも荒々しい行為にも心も身体も撃ち震えている。

 翔吾さんの首にすがりつくと、悩ましげな吐息が耳をくすぐる。
 小さな掠れ声が直接脳に語りかけてくるようだった。


「ゆっ……きのっ! あ……いしてるっ」


 涙が流れた。
 あんなことを言ったのに手離さないで、再び求めてくれることがうれしかった。


 揺さぶられ、必死にその首元にしがみつく。
 快楽の波に誘われ、急速に高みへ持ち上げられていく――



 わたしも、愛してる。



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Date:2013/02/08
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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