空色なキモチ

□ 掌の鼓動 □

掌の鼓動 46 (終)

第四十六話

エピローグ 3

【有紗と美春】





 翌日、郁弥と有紗の婚姻届と共に侑生の出生届を役所に提出した。
 入籍と出産同時で二倍おめでたいわねと笑顔で祝福され、二人は真っ赤になりながらも恐縮し、ひたすら頭を下げ続けた。じんわりと結婚した実感がわいてきて照れくさい反面二人は自然に手を繋いで役所を後にしていた。
 
 その日の夕方、郁弥の運転でドライブに行こうと誘われた。

「えーっ。侑くんは置いて行ってよ。二人で仲良くデートしてくればいいじゃん」
「だーめ。侑生も連れて行く。家族水入らずのデートなんだから邪魔しないでくれるかな? 音葉ちゃん」

 侑生を郁弥に抱き取られて音葉が名残惜しそうに頬を膨らませる。
 祖母も心配そうな顔で首を傾げた。
 
「でもねえ、今日は結婚記念日でしょう。みんなでお祝いしたかったのにねえ。有紗ちゃんだって出産終えたばかりで疲れちゃうだろうし」
「ばあちゃん、そんな心配しなくてもすぐに帰ってくるよ。今日は俺の奢りだから寿司でも取っといて。特上な!」
「本当か? じゃあご相伴に預かるかな」
「オヤジ……そこは俺が出すぐらい言ってくれよ」

 まるでコントみたいなやり取りに笑いが絶えない園田家の一員になれて本当によかったと有紗は幸せを噛みしめていた。ふと天道家で過ごしたことを思い出して切なくなったけど、三人は有紗にとって一生育ての親であり、兄。その事実は変わることはない。
 園田有紗、まだその名前にはなれないけれどいつかしっくりくる日が来るはず。そしてそれはそう遠くない未来であるはずだ。


**


「どこへ行くの? 郁弥」
「そんなに離れてないから」

 後部座席のチャイルドシートに侑生を乗せ、その隣に有紗が座る。
 すでに車には『赤ちゃんが乗っています』のシールが貼られている。数日前、郁弥と郁人がどこに貼るか、曲がっていないかで数分揉めたと教えてくれておかしかったのを思い出す。
 郁弥は白のワイシャツに紺と白のストライプのネクタイ姿で若い営業マンのようだ。こういう姿も似合うのがなんとなく気恥ずかしくてまともに見られない。やはり制服とは違う大人っぽい郁弥になんとなく頬の辺りが熱く感じてしまう。
 正装して行くところなのか確認しても、有紗は普段着のままでいいとさらりと核心を逸らされる。何度聞いても行く場所を教えてもらえないから半ば諦めて今尋ねたのを最後にしようと決めた。
 
「有紗」
「ん?」
「両想いってすごい奇跡みたいだと思わないか?」

 ミラー越しに笑顔の郁弥を見て、有紗はふと首を傾げた。
 急に何を言い出すのかと笑おうとしたら、思いのほか郁弥の表情が真剣なものになっていて茶化すことすらできなかった。

「拓弥から莉彩のことについて聞かされただろう」

 急に持ち出された理彩の話に有紗はわずかに動揺した。
 だけど郁弥は自分を愛していると言ってくれた。そして今は有紗と呼んでくれている。

「うん」

 返事をすると、少しだけ間をあけて郁弥が話し始めた。

「ごめんな。いやな思いさせてたよな」
「……ううん」
「有紗に、振られた相手を重ねて見ようとしていた。あの時はそうすることしかできなかった」
「もう、そのことは」
「弁解だけど聞いてほしい。あの時の俺は莉彩じゃなければどの女も同じだと思っていた。莉彩を傷つけて、辛い思いをさせて謝りたくて、彼女を心のどこかで思い続けることが、俺にできる唯一の償いだと思っていた。莉彩が消えて何もかもがどうでもいいって思った時、有紗に出会った」

 その時のことを思い出した有紗は胸が熱くなるようだった。
 侑生の手がわずかに動き、有紗の手に触れる。

「莉彩の記憶がどんどん薄れて、有紗のことだけになっていくのが怖かった」
「郁……」
「臆病だった。ただ逃げていた。また莉彩の時のように有紗を好きになって失うのが怖かった。それが現実になった時、自分の間違いに気がついた」

 今ならわかる。莉彩の気持ちが。
 遠くへ行くと分かっていたからこそ、本当に好きになった拓弥に思いを伝えたかった。
 郁弥はずっとその気持ちを理解してやることができなかった。そして裏切りだと莉彩を激しく罵った。
 
 有紗が郁弥の元を去って、そして隣に戻ってきてくれたからこそようやくその気持ちに気づくことができた。なんとなく少し大人になれたような気がしていた。

「今まで俺は大事なことに気づいてなかった。ちゃんと愛されていたのに、それに気づかないで……いや、気づかないふりをしてたのかもしれない。特にオヤジと有紗」
「え?」
「愛なんて信じてなかった。俺が邪魔だから若槻の家と押しつけあってるんだと思っていた。だけど今ならわかる。オヤジも若槻の……も、俺を愛してた。まあ、正確に言えば俺じゃなくて母親をなんだろうけど」
「そんな、こと」
「最初は俺なんか母親の付属品だと思い込んでた。でも今はちゃんとわかってるんだ。だから俺も愛されるだけじゃなくて、おこがましいけど愛を与えて……人を愛してみたいって思った」

 淡々と語る郁弥の背中を見つめてふと有紗は思った。
 入籍までして遅いかもしれないけど、その相手は自分じゃなくてもいいんじゃないか、と。

「今、有紗が考えてること手に取るようにわかる」

 赤信号で停止し、フロントミラー越しに郁弥が有紗を見つめている。

「すぐに浮かんだのは有紗だった。俺に無償の愛を与えてくれた。だから――」

 だから、そのあとに続く言葉を聞くのが怖かった。
 だけど郁弥はミラー越しに笑ってみせる。

「いや、だけど、だ。愛してくれるからと愛するは結びつかないって知った」
「え?」
「イコールじゃないとでも言えばわかる?」

 有紗は首を傾げた。
 雲を掴むような話で、郁弥の言いたいことが本当によくわからなかった。

「たとえ無償の愛をくれたとしても、自分がその人を愛せなければ愛は与えられない。当たり前だけどそのことにようやく気づいたんだ」
「……?」
「難しい?」
「うん」

 郁弥が当たり前と言ってることがそのままで、言いたいことが全く伝わってこない。

「若槻さんには悪いけど、俺はあの人を愛していない。オヤジのことはそこそこ愛してる。だけど二人とも俺に愛を与えてくれた」

 信号が青になり車が発進する。
 それでも郁弥は前を向き、運転しながら潜めた声で話を続けた。

「有紗が無償の愛を与えてくれていた時、同じように考えてたら俺は愛を与えられなかったかもしれない。愛されていることをいいことに好き勝手してただろう。あれは無意識の行動だった。いや、言い訳にもならないけど」
「言い訳? よくわからない」
「まあ、いいよ。そのうちわかってくれると思うから」

 郁弥の背中を見ながら有紗は何度も首を傾げた。
 有紗の愛が郁弥に向いている時、郁弥は別のほうを向いていた。そして有紗を失った時、郁弥はようやくその大事さに気づいた。
 愛する者同士がお互いを向いていないと、片方の思いでは成立しない。そしてそのタイミングを見誤ることの恐ろしさを身をもって知った。
 たとえ二度と有紗が郁弥のほうへ向いてくれなかったとしても、きっと愛し続けた。一方通行でも構わない。自分の気持ちに忠実にただ思い続けるだけ。有紗が郁弥にそうしてくれたように今度は自分がそうしていく。それでいい。ようやく郁弥は人を求め、思う気持ちを知ることができた。
 
「そういえば、有紗の気持ちを全く聞いていなかった。入籍しておいて今更だけど、俺のことどう思っているの?」

 振り返りたそうにしつつ振り返れなくてもどかしそうにミラー越しにちらっと有紗を見た。
 ばちっと視線が合い、一瞬にして有紗の頬が真っ赤に染まる。

「……す、き」
「そっか」
「ん」
「俺はきっと、有紗が思っている以上に有紗のことを愛してるよ」

 今度は郁弥が真っ赤になる番だった。
 だけど全然照れくさそうではなく、むしろ嬉しそうで誇らしげな表情だった。

「いつか莉彩に会えたら、ちゃんと謝って伝えたい。人を愛することを教えてくれてありがとうって」
「……そうだね」


 郁弥の話を聞きながら、有紗はゆうべの食事の時に話したことを思い出していた。

 園田家の大きなキッチンテーブルを挟み、郁弥と郁人が向かい合わせに座って有紗と祖母が向かい合わせ。音葉はシンクに背中を向ける形で誕生日席に座っている。
 郁弥も郁人もたくさん食べるので、おかわり係が音葉なのだと教えてくれた。なので炊飯器のそばに陣取るしかないと。
 本当だったら有紗が座っている席が音葉の場所だったに違いない。それなのに音葉がそう言ってくれたことに感謝の気持ちしかなかった。

「あ、やっべ」

 郁弥がシュウマイにかける醤油瓶を取ろうとして倒してしまった。
 すかさず世話焼きの音葉が「なーにやってるのお兄ちゃん」と小ばかにしながらテーブルをさっさときれいにしてゆく。
 ごめんごめんと言いながら、郁弥は首の後ろをさするようにして音葉に笑いかけていた。

「その癖、お父さんそっくりだね」
「癖?」
「失敗すると首の後ろに手を当てる癖、二人そっくりなんだよ。あとね、イライラすると爪をカチカチ鳴らすの。こうやって」

 音葉が親指と中指の爪をこすり合わせて音を鳴らしてみせるのを見て、郁弥と郁人はほぼ同時に真っ赤になった。
 本当の親子ではない、だけど小さい頃に一緒に暮らしていたこと、そして現在。その二人が似てしまったのはある意味自然なことであると言えるのかもしれない。

 これもひとつの愛の形なのかもしれない。
 侑生もきっと郁弥に似る。
 有紗はそう思いながらひそかに喜びを噛みしめ、その日が待ち遠しく感じていた。


**


 夕日が沈みかけた頃、郁弥の車がパーキングに止められた。
 一度も来たことのない場所だった。だけど郁弥がいるから怖くはない。眠っているけど侑生もいる。そろそろ授乳の時間だ。

「侑生を抱っこしてここで待っていて」

 運転席から降りた郁弥が「すぐ戻る」とひと言残して車から離れて行ってしまった。
 後部座席に取り残された有紗と侑生。なんだか訳がわからずきょとんとしていると侑生が泣き出した。

「あ、おなかすいたのね」

 着ていた七分袖の淡いピンクのブラウスの前を肌蹴させてから慣れない手つきでチャイルドシートのベルトを外して侑生を抱き上げる。
 さっと乳房を消毒してからあやすようにして侑生を近づけると吸い寄せられるように勢いよく飲み始めた。
 胸はさほど大きくないと思っていたけど母乳の出はよいらしい。助産師さんに乳房マッサージをされながら褒められた。授乳の仕方も上手だと。

「侑くんが上手に吸ってくれるからよく出るんだよね」

 侑生の頬を指で軽く撫でるとその一生懸命飲む姿にあふれんばかりの愛情が泉のように湧き上がってくる。
 よかったと胸を撫でおろし、ふと思う。
 美春も有紗がこのくらいの時は、同じように思っていてくれたのかもしれないと。

 おむつを替えてすでに眠りにおちた侑生を抱きかかえた時、車の窓がノックされた。
 少し汗をかいた郁弥が笑顔で窓越しに有紗と侑生を見つめて軽く手を振った。

「ごめん、お待たせ。下りれる?」

 郁弥が後部座席の扉を開け、出るように有紗を導く。
 侑生を抱きなおし、ゆっくりと車から降りた有紗の前に立っていたのは美春だった。
 最後に見た時よりわずかに頬がこけているように見える。髪は相変わらず栗色に染めているようで根元がわずかに黒く、ウェーブを描いた毛先はぱさぱさに見えた。
 なにより有紗を、そしてその胸に抱かれている侑生を見て大きく目を見開いていた。

「なにかと思えば……」

 ふいと有紗から目を逸らした美春は足元を見つめていた。

 圭理から受け取ったメモに書かれていたのは有紗の母が働いているスナックの名前と住所だった。
 それを知った郁弥はここに有紗を連れてきた。圭理の真意はそこにあると思ったから。

 郁弥が店に入った途端、美春は笑顔で郁弥を歓迎し、カウンター席に座らせた。
 ひさしぶりの新規の客、しかも若い美形の好青年に胸が躍ったのも事実だった。どうせ接客するならくたびれた中年男よりも若い方がうれしいに決まっている。
 いそいそと酒の準備をしようとしたら「未成年なんで」と言われて美春は拍子抜けした。
 めんどくさいことに巻き込まれたくない美春は一瞬にして笑顔を消し、出て行くよう郁弥に告げた。
 その郁弥は少しだけ時間がほしい、自分についてきてくれないかと美春に深々と頭を下げる。
 幸い今日は早入りのホステスがいたため、店を出ることは可能だったもののなんとなく嫌な予感がしてのらりくらりとかわそうとしたけど、郁弥の真剣な目がどうしてもと訴えかけるためしぶしぶついてきたのだった。

 そこにいたのが、ひとり娘の有紗。
 しかもまだ産まれて間もない赤ん坊を抱いて。

「おか、あ……さん」

 有紗の声が小さく震えている。

「あんた、あの医者のお坊ちゃんと結婚したんじゃなかったの?」
「え?」
「申し遅れました、園田郁弥と申します。有紗さんと本日入籍しました。事後報告になってしまってすみません」

 有紗の隣に立った郁弥が再び深々と美春に頭を下げる。
 なぜ美春がそのことを知っているのかわからなくて有紗は軽くパニックを起こしていた。 

「お母さん、なんで圭くんのこと……」
「まあいいか。知ったことじゃない」

 ポケットから煙草を取り出し、真っ赤な口紅を塗った唇に銜えようとした美春が一瞬動きを止める。
 侑生に視線を落とし、煙草をポケットに戻した。
 わずかな沈黙が流れ、息苦しさを感じた時にそれを破ったのは郁弥だった。

「有紗を……産んでくださってありがとうございました」

 郁弥が腰をほぼ九十度に曲げ、美春に深くお辞儀をした。
 その郁弥を見て美春が目を丸くする。同じように有紗も郁弥を見た後、美春と視線が絡まった。

「有紗は、お母さんに言うことないの?」

 顔をあげた郁弥の真剣な顔に瞠目する。
 茫然とした有紗の腕から侑生を抱き上げて郁弥がその胸に抱きなおした。
 それでもぐっすりと気持ちよさそうに眠り続ける侑生の耳と郁弥のそれがそっくりでうれしいのに涙が出そうになる。

「思い切りぶつかってこい」

 緊張の面持ちのままなんとか笑顔を見せる郁弥が小さな声でそう告げた。
 うん、と一度だけうなずいた有紗がゆっくりと美春に近づいてゆく。
 美春は一度だけ後ずさり、だけどその後は一歩たりとも動かずに有紗が近づいてくるのを待ちわびているようだった。

「わたし、園田有紗になりました」
「……そう」

 有紗の真剣な眼差しは潤んでいる。
 だけど淀みない瞳で見つめられ、美春は目を逸らすことができずにいた。

「わたしは、絶対にお母さんみたいにはならない」
「……そうかい」
「だけど、お母さんのこと……」

 ただ愛されたかった。
 その思いすらかなわないまま有紗も母という立場になった。
 もしかしたら美春は心のどこかで少しは有紗のことを思っていてくれたのかもしれない。
 そんな思いを、切実なる願いをどうしても捨てることができなかった。

 さっき郁弥が話してくれたことを思い出した。

 ――愛してくれるからと愛を与えるは結びつかない

 つまりそういうことなのだ。
 有紗がいくら母に思いを馳せて好きだと言ったとしても愛を与えてはもらえない。
 一方的に愛を与えても、相手の気持ちが自身に向いていないのならそれはただの一方通行。

 悲しいけれど、それが事実で。
 郁弥が言いたかったことがそういうことなんだって今ようやくわかった。

 天道家のみんなは有紗に人を大事に思う気持ちを教えてくれた。
 いい方へ考えれば美春は常に我慢する気持ちを教えてくれたのかもしれない。

 言葉にしなければ伝わらない気持ちも、そうしなくても伝わる思いもある。
 だけど全部押さえ込んで、何も言わなくても伝わってほしいと願うのはただのエゴだと有紗は身をもってコミュニケーションの大事さを知った。

 有紗にとって美春は手本にする相手ではなく、反面教師だった。
 そう気づいた時、言おうとした言葉をぐっと飲み込んで、有紗は力強く美春を睨みつけた。

「一生、恨むから」

 美春の目が一瞬大きく見開かれる。
 有紗から向けられた視線は痛みを感じるのではないかと思うくらい鋭く、力が込められていた。
 まるで魂の叫びをぶつけるような低く揺るぎない思いを含む声。そこからは子どもの頃の有紗の面影を感じ取ることはできなかった。

 いつからこういう目をするようになったのだろうか。
 小さい頃は美春を見ては怯え、いつも泣きそうな表情をしていた。それがまた責められているように感じ、苛立ちのあまり冷たくあしらい罵倒した。有紗は美春の唯一のストレスのはけ口だった。
 抵抗しない娘の涙混じりの目から読み取れた感情はただひとつ。

 ――ごめんなさい

 有紗はずっとそう美春に訴え続けていた。
 有紗が悪いんじゃない。それをわかっていているのに謝る有紗に憎しみがこんこんと湧き、感情が抑えきれなくて何度か手をあげた。

 あの有紗が、こんなにも強くなったことに美春は驚きを隠せなかった。 

「勝手にしな」

 ふっと笑った美春が踵を返し、もと来た道をゆっくりと戻って行く。
 かつ、かつとヒールの音が少しずつ遠ざかる。
 有紗の目は潤んでいたけれど、涙が流れることはなかった。

 もう二度と会うことはないかもしれない。
 それでもいい。きっと母もそう思っているはず。
 最後に言われた言葉に美春はショックを受けたかもしれない。だけど憎まれてもいい。覚えていてほしい。

 高邑有紗があなたの娘だったことを。
 


「幸せに……有紗」

 愛してやることができなかった娘を思い、振り返りもせずに歩きながら小さな声でつぶやいた美春はひさしぶりに温かな涙を流していることにしばらく気づかなかった。


**
    

「帰ろうか。みんな待ってる」
「うん」

 振り返った有紗は吹っ切れたような明るい笑顔を郁弥に向ける。
 ここに連れてきてくれて、根が深かった心の呪縛を解いてくれた郁弥に有紗は心から感謝した。


 血の繋がった父よりも育ての父を大事に思い、愛している。
 もしかしたら侑生もそうなっていたのかもしれない。
 今、こうしてこの子を抱くことができたのは奇跡のような気がしていた。

 その権利をくれた有紗に、郁弥は一生感謝と償いをし続けていくのだろう。 

 そしてこの温もりと掌の中に感じる鼓動を一生忘れない。
 有紗と侑生を自身の命と生涯をかけて守り続けると郁弥は強く胸に誓った。
 

 (了)



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Date:2014/11/28
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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