空色なキモチ

□ ○○の日 □

7月 5日 ビキニの日

7月5日 ビキニの日

I feel that the heat of love was gone

《幼馴染・中学生》




 球技大会の日からわたしは直樹を意識しだして、あまり部屋に行かなくなっていた。

 少し前までパンツ丸出しで直樹のベッドに横になっていたのが信じられない。
 今思い返すと顔から火が出そう。
 そもそもキスしたあの日から少しずつ変わってゆく自分の心の変化にはなんとなく気づいていたけど、それを認めたくなくて目を逸らしていたのかもしれない。

 だから今度はわたしから直樹に歩み寄ってみようと思っている。

 中学に入って初めての期末テストも終わった。
 梅雨は明けたばかり。今日ももくもくとすごい入道雲と日差しがじりじりと皮膚を刺すような暑さだ。

 今日は夏休みに一緒にプールに行かないか誘ってみるつもり。 
 ふたりきりは大胆かなと思って、前もって鈴花に一緒に行ってほしいって打診してた。もちろん了承ももらってる。
 女子がふたりで男子が直樹だけだとたぶん恥ずかしがって行かないだろうから、友達誘っていいよって言うつもり。ちゃんと直樹の気持ちも考えてるよ。


 いつものように勝手に直樹の家にお邪魔し(おばさんには挨拶済み)階段を静かにあがる。
 前まではどしどし足音をたててたけど、少しはおしとやかにできるんだよってところも見せておきたいからね。

 階段を上りきって左右に部屋がある。
 すぐ右が直樹の部屋でその向かいが直樹のすぐ上のお兄さん、晴樹(はるき)くんの部屋。その先の部屋が長男、大樹(ひろき)くんの部屋になっている。
 ハルくんとヒロくんは一卵性双生児でそっくりなんだけど小さなほくろでわずかに区別がつく。大学一年生でふたりとも頭がいいし、背が高くてかっこいい。たぶんすごくモテるし、優しいし、ひとりっ子のわたしにとっても素敵なお兄さんたち。

 きっと直樹もふたりのお兄さんたちのようにかっこよくなるんだろうなあ。
 
 ふと、直樹の部屋の前で立ち止まる。
 わずかにドアが開いているのに気が付いたから。

 いないのかな? トイレ?

 音を立てずにそっと扉を開いてみると勉強机に向かった直樹の背中が見えた。
 なんだ、いるんじゃない。勉強してるのかな……試験終わったばかりなのに。
 うしろから静かに近づいて「わっ」って驚かしてやろうと思い立ち、抜き足差し足で近づく、と。

 机の上に置かれていたのは教科書じゃなく、巨乳のアイドルがビキニ姿で際どいポーズを取っている雑誌だった。

「なに見てんの!?」
「!?☆§×@△*」

 言葉にならない声をあげた直樹が椅子から滑り落ちながら必死で雑誌を閉じた。
 その表紙もかわいい系アイドルの巨乳ビキニ写真。ちょっとエッチな雑誌だってすぐにわかる。

「待て! 瑠璃、これは違う!」

 一生懸命弁解しようと両手を振りながらアワアワする直樹をわたしはジト目で睨みつけた。

「マジ違うんだって! これは兄ちゃんたちが『今日はビキニの日だからこのくらい見ておけ』って!」
「うわ、ハルくんとヒロくんのせいにするんだ?」
「せいじゃないって、マジだって!」

 ぼすんと大きな音を立てて直樹がその雑誌を椅子の横にあったゴミ箱に丸めて捨てた。
 そもそもビキニの日ってなによ? そんなもの聞いたことないんだから。

「ほんとだって! なんなら兄貴たち呼んでくるから……」
「そんなことしなくていいよ! ハルくんとヒロくんがそんなことするわけないもん。直樹サイテーだよ」

 一気にまくし立てると、直樹があからさまにむっとした表情を浮かべた。

「なんで信じてくれないんだよ!」
「信じるも信じないもないもん! このどすけべ!」

 わたしの捨て台詞がきいたのか、直樹が眉間にしわを寄せて目を眇める。
 そしてふっと笑ったかと思うと両目を細めて上からわたしを見下すようにしながら胸元で腕を組む。その視線はわたしの胸元に注がれているように見えた。

「ああ、そんなにひがむなよ。ちっこいからってさ」

 図星を指され、喉元で声がくぐもる。
 自分のセーラー服の胸元を見ると悲しくなるくらいナインペタン。
 でもそんなこと思ってると知られたくなくて、わたしも必死の言い訳をした。

「こう見えても、ぬっ! 脱いだらすごいんだからねっ」
「へー、ほんとかよ。じゃあ見せてみろっての」
「やだっ! えっち!」

 両腕を組むようにして胸元を覆い、直樹に背を向ける。
 すごいわけないじゃないの。見たままだってわかってて挑発してきてるのがわかるから悔しいしムカつく!

「なにがえっちだよ。今まで散々パンツ丸出しだったくせに」
「なっ!」
「下は見せられても上は見せられないってか」
「パンツとブラは違うのーっ」
「どう違うの?」

 急に冷静に聞かれ、シーンと空気が静まり返る。
 どう違うって、パンツはずっと履いてたけどブラは最近になってつけ始めたもので大人の象徴ってかなんと言うか……。
 待って、その理屈でいうとブラだってずっとつけてれば見せても平気ということになってしまう。うーん、うーん。

「って! なんでそんなの説明しないといけないの?」
「そっちが言ったんだろ」
「うるさい! うるさーい!」

 何も言えなくなって大声をあげると、直樹が眉間にしわを寄せてわたしを見ていた。
 
「そもそも瑠璃が俺の言うこと信じないから」
「だって」
「別に俺、巨乳が好きなわけじゃないし」

 ちらっとわたしの胸元に落とす視線を感じ、ぎっと下から睨みあげてやると一瞬だけ直樹がひるんだように見えた。
 あんな巨乳のアイドルの写真ガン見ておいて好きじゃないなんて何の説得力もないんだから!
 わたしが近づいてきたのすら気づかないくらい真剣だったくせに!

「もう! 夏休みプールに誘おうと思ったのにやめた!」
「ふん! どーせ色気ねえスクール水着だろ? そんなの見たかねーよ! 誘うならビキニにしろよ」
「んなっ!」
「ほら、このマイナがつけてる赤いビキニなんて最高じゃね?」

 おもむろにゴミ箱から捨てた雑誌を拾い上げ、表紙の人気アイドルマイナを指さして見せる。

「これなら胸がなくてもそれなりに――」
「ストップ。直樹言い過ぎ」

 扉口にハルくんとヒロくんが立っていた。
 いつからそこでわたしたちのやり取りを聞いていたのか見当もつかない。

「ごめんね、瑠璃ちゃん。直樹はほんと口悪いよね」
「ったく言い過ぎだよな。かわいそうに。こんなアホな弟の言うこと気にすることないからね」

 両サイドからハルくんとヒロくんに守られるようにして頭を撫でられた。
 うぅ、やっぱり優しい。こんな優しいふたりがあんなエロ雑誌を直樹に勧めるわけなんかない!

「なっ、だいたい兄貴たちがこんな雑誌を俺に……」
「瑠璃ちゃん、ささっ、機嫌直して一緒にケーキ食べよっか」
「じゃ僕がおいしい紅茶淹れてあげるね」
「はーい!」
「ちょっ、俺の分はっ?」

 ふたりに促されるまま直樹の部屋を出る寸前、振り返って思いきりアカンベーしてやった。

 やっぱり直樹なんか好きなわけない。
 球技大会の時はかっこよく見えたのに! もう知らないんだから!!!


 【おわり】





 ビキニスタイルの日
 1946年のこの日、フランスのルイ・レアールが、世界で最も小さい水着としてビキニスタイルの水着を発表した。
 発表の4日前にアメリカが原爆実験を行ったビキニ環礁からその名前がとられた(今日は何の日~毎日が記念日~より一部抜粋)


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Date:2014/07/05
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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