空色なキモチ

□ 満月の夜に見る夢は □

満月の夜に見る夢は 第2章 第30夜

 
 涙でぐしゃぐしゃになったわたしの顔を優しく撫でる温かい手のひら。
 それは壊れ物を扱うようにそっと、止め処なく流れ落ちる涙を拭ってくれた。


「やっぱり……おかしいと思った。真奈美に何か言われたんだな」

「……」

「急に帰ったり、拒絶したり不自然なことが多すぎてそうじゃないかと思ってたけど、今確信に変わったよ。聞いて、雪乃」

「……ぅ」

「俺と真奈美はもう何の関係もないんだよ。信じてくれ」


 頬を押さえ込まれながら必死で首を振る。

 関係ないはずない。海原さんは恋する女の人の目をしていた。愛おしそうにこの人のことを話した。
 もう関係ないって、それならなんで海原さんがあの家の鍵を持っているの?


「だって……」

「俺の言うことだけ信じて」

「――!!」


 突然唇を奪われる。
 首を振って抵抗しようとするもしっかりと頬を押さえられていて動かない。
 その腕に手をかけて離させようとしても全く無意味な抵抗に終わる。
 角度を変え、何度も唇を重ねられる。上唇を食み、そして下唇も同様にされ、自然に開いたわたしの唇の間から柔らかい舌が挿入された。

 全身の神経の一部が唇に集結したかのようにそこからの刺激がわたしを快楽の波へいざなう。
 その刺激が流れるように全身に伝わり熱く火照っていく。

 下腹部が疼くような感覚は間違いなくわたしが感じていることを示しているはず。


「んぅ……っく……」


 流し込まれる唾液を飲み込みながら鼻で必死に息をする。
 風邪をひいて少し鼻が詰まっているから苦しい。まだ慣れない……こんな……。


「ん……苦しい?」

「ん……」

「家まで我慢しようと思ったけど無理だ……ここで、いい?」

「え?」


 瞳の奥に孕む熱と欲情がすぐに見て取れた。
 どうしよう……わたしはどうしたらいいのかわからない。

 この人の言葉を信じていいの? 海原さんのこと――

 戸惑うわたしを無視して身体が抱き上げられた。
 それはもう抱え込むような状態で、大きな歩幅で寝室へと連れ込まれベッドに座らされる。


「――あ」


 言葉を発することすら遮られて口づけされたままベッドに押し倒された。
 いきなりすぎて待ってほしくて手て胸元を押すと、すぐに手首を拘束され頭の上でひとまとめにされてしまう。
 

「あ、やだ!」

「じゃ、抵抗しないで」


 そう言いながら右手だけでわたしのパジャマのボタンを器用に外していく。
 その目にはすでに迷いがない。抵抗しても無駄と目で訴えているように見えた。


「わかったからっ、手を……」


 哀願してようやく解放された手を元の位置に戻すとわたしの上に跨った翔吾さんが一度だけうんと大きくうなずいた。
 その手が剥ぎ取るようにわたしのパジャマを脱がし、あっという間に下着を取られた。
 ひんやりしていた布団がじかに肌に触れてゾクッとした。
 手で露わになった胸元を隠そうとすると、すぐに手首を押さえつけられ顔の横に固定されてしまう。
 恥ずかしくて泣き出しそうなわたしをその目は容赦せず、穴が開くほど見つめていた。


「いや……」

「なにが、いや?」

「そんなに……見ないで」


 募る羞恥心をどうにもできないまま顔を左へ背けて目を閉じる。
 両手を拘束されてはもうどうにもならない。見られているのを自分が見ないようにするしかない。


「ずっとこうしたかった……」


 そう漏らした声は少し震えているように聞こえた。
 聞き返そうと思ったけど、すでにわたしの身体に覆い被さった翔吾さんは貪るようにわたしの首筋に唇と舌を這わせている。
 
 涙が出た。

 悲しくなんかない、むしろこうされて心も身体も激しいよろこびで打ち震えているのに……。
 与えられる刺激に身体中が疼く、触れられる部分から伝わる快感。

 何もかも忘れて、今はそれに溺れてしまいたかった。

 
 何度も高みに持ち上げられ、揺すられ、達する。
 心も身体もおかしくなりそうになる。

 それでも翔吾さんは容赦なかった。
 何度も何度も唇を重ね、わたしの身体に印をつけ、貪欲に求め続けられる。
 声をあげるのが恥ずかしくて堪えていたのに、無理やり引き出そうと執拗に攻められた。

 
「も、う……や、めっ……てっ」

「ダメ、だっ……もっとっ……」


 翔吾さんの汗がわたしの首筋に落ちる。
 目を開くと、少し長めの前髪が翔吾さんの目許を隠している。そこにも月の光に照らされた汗の粒が見えた。
 お互いに熱を発した身体が吸いつくように引き寄せられ、激しく揺さぶられる。気がつけば離すまいと必死に翔吾さんの腰に足を絡み付けていた。
 愛液の混じりあう音、そして苦しそうな激しい喘ぎ声と吐息だけが部屋に響き続ける。

 信じたい、あなたの言うことだけを信じてずっとそばにいたい。
 お願い、もっともっと強く抱きしめて。苦しいくらい、何も考えられないくらいに。

 何度も喜悦の声をあげて達するわたしを見て、翔吾さんが目を細めてうれしそうに微笑んだ。


 すきで、いて……いいの?


 両手を伸ばして翔吾さんの首筋に抱きつこうとした時、わたしの意識が遠のいていった。


 
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Date:2013/02/08
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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