空色なキモチ

□ あなたはおもちゃ □

あなたはおもちゃ 5

第5話

おもちゃの反乱!?




 いつもなら家につくと「ただいまー」と陽気な声で挨拶するのに、今日のでく男は一言もしゃべらず玄関をずかずかとあがっていく。
 リビングの方から義父と義母がちらりとこっちの様子を伺っているのがわかった。わたしと目が合うとさっと戻ってしまう。いつもだったらでく男と同じくらい高いテンションで抱きつかんばかりに玄関までお出迎えしてくれるのに?
 目の前を歩くでく男の顔をのぞき込もうとするけど見えなかった。いつもならわたしを誘導する形で歩幅をあわせてくれるのにずんずん前をいってしまう。

「お風呂わいてる。今日は桧の香り」
「えっ、今日は」 
「早く入ってきて」

 今日の気分はジャスミンの香りだよって言おうとしたけど言える雰囲気じゃなかった。こんなに不機嫌なのは初めてだ。
 だんだん腹が立ってきた。なんでこんなにびくびくしないといけないの。わたしのほうが優勢の立場じゃないと納得できない。なんとかいつものペースに持ち込みたい。
 なるべく早く入浴をすませ部屋に戻ると、でく男がバスローブ姿でベッドに座っていた。家の桧風呂に入ったのだろう。

「ここ、座って」

 ぽんぽんっと自分の隣を手で叩くでく男の表情はいつものものだった。
 少しほっとして、るーのベッドに視線を移すと気持ちよさそうに眠っていた。でく男の指示を無視してるーのベッド前に歩み寄ってその頭を撫でると、眠そうな表情でかったるそうにこっちをちらっと見ている。

「ゆーちゃん、ここ」
「やだ」
「るーは邪魔しないでって言ってる、ゆーちゃんは僕と話をして」

 いきなり間合いを詰められて、あっと思った時には腕を掴まれていた。あっ、あっと息をつくまもなくベッドに押し倒され覆い被さられていた。またも床ドン状態。

「ちょ、何してんの?」
「ゆーちゃんを追いつめてる」

 それは見ればわかる。何となくバカにされたような気がしてかちんとなった。

「どいて」
「やだ」
「どけ」
「い・や・だ」

 うっ、その一言ずつ区切る言い方はわたしの専売特許だったはずだ。それをこの男はバカにするようにわたしに言い放った。

「わたし達の後つけてたの? ストーカーじゃない!」

 でく男がくっと目を眇めた。
 かけていた眼鏡をはずして枕元に置き、ぐっとわたしに顔を寄せてくる。その行為に情けなくもドキッとしてしまい、慌てて目を逸らした。

「ストーカーねえ。まあ、そうとも言うのかな? でも僕は悪いことしたなんて思ってない。だって悪いのはゆーちゃんなんだから」
「なっ、なんっ……」

 その次の言葉は発することができなかった。
 でく男がわたしの唇を自身の唇で塞いだから。

「っん!」

 一瞬何がなんだかわからず、固まるわたしの唇にちゅっとリップ音を立てて吸いついてきた。
 わたしの、ファーストキス。おもちゃに奪われた! 

「やっ! なにやってんの?」
「キス」
「しっ、信じられないっ! 誰に許可得てこんなっ」

 でく男の胸元をグーで叩くとバスローブが少しだけはだけだ。意外と硬いその胸にまた心臓がどくんと跳ね上がる。

「必要ない。ゆーちゃんは僕のものだもん」
「はあっ? 何言ってんの? 寝ぼけてるんじゃないの?」
「寝ぼけてるのはゆーちゃんのほうでしょ? 約束破ってあんないかがわしいところに僕以外の男と行くなんて許さない」

 胸を叩いていた両手首をぐっと掴まれベッドに押しつけられた。
 いつもと違うでく男の雰囲気にドキドキが止まらない。こんなのおかしい。

「やだっ! 離さないと離婚するからっ」
「自分の立場わかって言ってるの?」
「なっ?」
「わかってるんでしょ? そんなことできやしないって」

 わたしの手首を握る力が強まる。

「約束を破ったのはゆーちゃんのほうだ。お仕置きを受けてもらわないとね」

 ――お仕置き!?
 
「やだ! ふざけないで!」
「ふざけてない。暴れると辛い思いするのはゆーちゃんだよ」
「あっ、ちょ! やめてよ!」

 いきなり両手首を頭上で一まとめにされ、片手で固定された。
 恐ろしいくらいの強い力で動かそうにもびくともしない。
 
「やめてよ、こんなのやだ」

 哀願してでく男の顔を見るといつもみたいにヘラヘラしたものではなかった。
 深い黒曜色の瞳の奥に宿るわずかな鋭い光。自分の貞操の危機を感じた。
 足を大きく開かれ、その間にでく男の身体が割り込んでくる。片手でわたしのパジャマのボタンを手際よく外し始めた。

「やだっ! こんなのレイプじゃん!」
「黙って」

 初めて聞く冷たい言葉に涙が溢れ出した。
 パジャマの前がはだけさせられ、ブラが露わになる。奇しくも今日はお気に入りのピンクのレース。

「きれいだよ、ゆーちゃん」
「うっ……うぅ……」

 ぎゅっと目を閉じて嗚咽を漏らすと、両手がふわっと軽くなる。
 拘束が解かれ、開放されたと気づく。だけどその時にはでく男の上半身はわたしの身体に覆い被さっていた。
 耳元にかかる吐息。ちゅっと吸い付かれた後、耳朶を食んだり舌先でちろちろと嬲られ、背筋に電流が走ったような感覚がした。

「あっ! やぁ!」

 両手ででく男の背中をぽかぽか叩いて必死に抵抗するけどやめてくれなかった。
 それどころか首筋や鎖骨にキスの嵐が降り注ぎ、時には噛み付くような鋭い刺激も加わり、思わず背中をのけ反らせた瞬間掻き抱かれ片手でブラのホックを外される。
 急に緩んだ締め付けに声をあげる間もなく裸の胸が露わになってしまっていた。ブラのカップがわたしの胸の先をかすめ、びくんと身体が跳ね上がる。
 
「やめてえ! もぅっ……」

 でく男の大きな手が下から持ち上げるようにわたしの胸を包み込み、その先に触れた。
 硬くなっているのを知られたくなかった。羞恥に涙が零れ落ちる。
 こんなはずじゃなかった。この人との初めてはわたしが優位に立ちたい、そう思っただけだったのに。
 いつの間にかわたしはでく男と結ばれることを念頭においていた。最初は絶対にイヤだ、生理的に受け付けないって決めつけていたはずなのに。

「もう、諦めて」

 胸元にかかる吐息、そしてすでにしこった先端を舌先でべろりと舐めあげられ、口に含まれる。ちりっとした刺激とともに下腹の辺りがきゅうっとなった。
 
「んんっ!」

 感じているのがわかる。そういう淫らな声をあげてしまったことも。恥ずかしくておかしくなりそうだった。
 わざと音を立て、円を描くように先をかすめながら舐られびくびくと揺れ動く自分の身体をどうにもできない。自然に胸をでく男に突き出すようにしていた。
 気がつけば、わたしの手はだらりと落ちている。抵抗すら忘れていたのだ。
 上半身を軽く持ち上げられ、パジャマを完全に脱がされていた。

「はぁっ……あ、んんっ」

 パジャマのズボンの中に手がすっと滑り込み、太腿の外側を円を描くように撫でられる。
 片手は胸の先を摘み上げ、もう片方はずっと舌の先で転がされていた。
 身体の中心が疼き始め、足を閉じようとしてもでく男の身体がそれを阻んで許さない。抵抗らしい抵抗ができないまま両手がズボンにかかり、ずるりと下げられた。

「あっ! だめっ」
「今更だよ。ゆーちゃん」

 片手で軽々と腰が持ち上げられ、いとも簡単に下着ごと下ろされてしまう。臀部を通過した下着とズボンは膝をぐいっと持ち上げられてあっという間に取り払われる。
 初めて男の人の目の前に全てを曝け出してしまった瞬間だった。
 
「いやあ……許して、許してよぅ」
「だめ」

 即答され、与えられている刺激に酔いしれていた頭が一瞬にしてクリアになった。

「なっ、なによ! あんたっ、わたしを満足させられる自信あるわけっ」

 精一杯の牽制だった。それなのにでく男は今だかつてない艶っぽい笑みを浮かべ「あるよ」と言い放つ。
 その途端、わたしの今一番疼いている部分に容赦なく触れた。

「ひゃあ!」

 変な声をあげたことは自覚している。だけどどうにもならなかった。
 陰裂に沿うよう上から下になぞられ、敏感な部分に触れられた時、わたしの全身が飛び上がるように打ち震えてプライドは完全に頭を擡げた。

「いやあ! 許して! ごめんなさいっ」

 その指の動きは止まらずその下に伸びて流れだす蜜をすくい上げて陰核に塗りつける。
 すでにそこは濡れそぼっていることに気がついていた。だから触れないでほしかった。それなのに指の腹で何度も刺激され、目の前がチカチカして頭の中が真っ白になりかけた時。

「まだイかせてあげない」

 急にその刺激が止められた。そこは切なく疼き続け、物足りなさを訴えているのに。
 意地悪な仕打ちに憤りを感じ、ベッドの上に逃げようと腰を引くもそんなのはお見通しだったようでぐいっともとの位置に戻される。そして熱を孕んだ目からは怒りの感情しか読み取れなかった。
 ――怖い、本気でそう思った。

「逃がさないよ。ゆーちゃんの初めては僕のものだ」
「!?」

 わたしが初めてだって、知ってたの?
 あまりにも衝撃的な発言に、言葉さえ出てこなかった。

「それなのに、服部くんに捧げようとした。絶対に許さない」
「ちがっ!」
「何が違うの?」
「あーっ! やっ!」

 いきなり両膝を持ち上げられ、太腿の裏を両手で押さえ込まれたと同時にでく男の顔がわたしの身体の中心に近づけられた。
 ふうっと息を吹きかけられ、恥骨辺りの産毛がざわりと揺れたのがわかる。それだけでもわたしをひるませるには十分すぎるものだった。

「や! 汚いっ……よ、あぁっ」

 最後のほうは力なく吐息混じりに漏らした喘ぎ声のようになってしまう。
 秘肉を広げられ舌の先でつつくようにされたりじっくりそしてねっとりとその中心で舐られたりする。ぺちゃぺちゃとわざと音を立てているのが更なる羞恥を煽った。
 初めて与えられる官能的な刺激に呼吸が追いつかない。身体全体がきゅっと縮こまったように小刻みに震え始めた。そして、さっき導かれたように高い波にさらわれそうな感覚が押し寄せてくる。

「あっ! も、ダメえ!!」

 押さえ込まれた太腿は動かせなかったけど、膝から下をジタバタさせ、わたしはあっけなく高みに昇り詰めてしまった。おもちゃにイかされた! 悔しい!
 途切れる息を戻したいのに悦に入ったような表情で口元を拭いながら覆い被さってくる。
 わたしの目許に滲む涙を優しく掌全体で拭いながら、もう片方の手指は今達したばかりでヒクつく蜜壷の中に押し込められた。

「うっ! やっ、いたっ」
「ちょっとずつね。ゆっくりするから」
「やだっ! 怖いっ、抜いて!」
「だーめ、中すごいキュンキュンしてる」

 それ以上言葉にしてほしくなかった。恥ずかしくて死ねそうだ。そういう場合の死因はなんて言うんだろうか。そんなどうでもいいことを考えていた。
 だけど痛いのは最初だけで、その言葉通りゆっくりと優しくその指が増やされ、動かされる。ふと、一点に指が触れた場所がわたしの全身を再び震わせた。

「――っ! っあ!」
「ここだね、ゆーちゃんのイイトコロ」
「いくない! やだああああ」
「お仕置きなんだからしょうがないでしょ。気持ちよくしてあげてるだけありがたいと思わないと」
「あんたが悪いんだもん!」

 我を忘れて叫びあげていた。
 その途端、執拗に繰り返されていた刺激が止まる。恐る恐る目を開いてみると、驚いた顔のでく男がわたしの顔を覗き込んでいた。
 ポロポロ涙が溢れ出すのがどうにもならず、拭いもせずわたしは爆発した。

「初めての女はめんどくさいってっあんたが言ったんじゃない!」
「え?」
「だからっ、わたしっ知られたくなくって……っていうか、初めてじゃ負けた気がしてっ、だから、だから……」
「え? ちょっと、ゆーちゃん。なにそれ? どういうこと? 僕が初めての女はって――」

 思い出したように「ああっ」と声をあげて顔を強張らせている。

「違うよ! 違うって! あれはユキちゃんを慰めるために言っただけで、僕のことじゃないって」

 こんな時に別の女の名前を出す? 普通、ありえない!
 ユキだかマキだか知らないけど、わたしの怒りのボルテージはMAXに達していた。

「知らない! 勘違いじゃないもんっ! いっつもキレイな女の人に囲まれてデレデレしてるの知ってるもんっ!」
「デレデレって、そんなことしてないよ。僕が好きなのはゆーちゃんだけだもん」
「嘘っ! 信じないもんっ」

 完全に論点がずれまくっているのはわかっていた。
 それに対抗するようにムッとした表情ででく男が言った言葉なんか信じられるわけがなかった。
 だってただの政略結婚なのに、わたしのことなんか好きになるわけないじゃない。ワガママばっかり言ってるし、かわいくだってない。
 もちろんわたしだって好きになるわけなんかないって思ってた。だけど、いつの間にかこの人が他の女の人と一緒にいる姿を見るだけで心のどこかでイライラしてた。

「本当だよ。僕はずっとゆーちゃんのことしか好きじゃないんだ」
「ず……っと?」

 ジタバタと暴れだすわたしの手首はいつの間にか拘束され、再びベッドに押し付けられていた。
 そしてずいっと近づけられる顔。

「僕のこと、本当に覚えてないんだ」
「???」
「すごいショックなんだけど、全部話すよ。その前にさ、コレ……僕もう我慢できないんだ」
「っ! ひゃあ」

 手をとられ、導かれた先はバスローブ越しに硬く反り勃ったでく男のイチモツだった。
 はっ……初めて触ってしまった! 生じゃないけどっ。でもっ、でもっ。

「ゆーちゃんの中に入りたい」
「……」
「も、いいよね?」

 上目遣いでわたしの様子を伺いながら泣き出しそうなでく男を見て、こくんと小さくうなずいた。
 優しくして、そう約束した。

 ――それなのに


「いってえええええええ!」


 わたしの絶叫が部屋に響いたのはその後すぐのことだった。


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Date:2013/11/30
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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