空色なキモチ

□ VOICE □

VOICE 181

第181話 密会の謎

柊視点




 時計を見ると十四時四十五分をさしていた。

 今から湊総合病院へ向かっても十五時までには絶対に間に合わない。だけど亜矢はすぐに実父に未来を会わせたりしないだろう。少しだけど事情は知っているんだから。

 俺に内緒でふたりで会うってどういうつもりだ。
 亜矢にはもっときちんと説明しておくべきだったのかもしれない。
 自分の本当の子供じゃないが、十五歳の少女に恋愛感情を抱く義父なんておかしいと思わなかったのだろうか。
 もしかしたら亜矢は未来をあいつに会わせるために呼んだのではないのかもしれない。だったら俺に内緒にする必要もないだろう。疑問ばかりが浮かんでゆく。


 学校を飛び出してタクシーを拾う。
 丁度学校にタクシーで来たらしき人と入れ違いに乗れた。


「湊総合病院まで大至急!」


 すぐに車が動き出すが、駅までタクシーで行ってそこからは電車の方が速かったかだろうかといろいろ考えてしまう。

 亜矢はなんて言って未来を呼び出したのだろうか。
 あいつが入院しているって言ったのか、そのことは未来には伝えてなかったのに。
 入院していると言われたから、未来はあいつの元へ行ったのだろうか。いや、そのぐらいでは行かないだろう。

 昨日恋愛感情を抱かれていることを知って嫌悪感をむき出しにし、嘔吐までした相手にわざわざ会いになんか行くもんか。一番考えられるのはなんだろうか。
 亜矢が困っていると言えば、未来は飛んでいくだろう。だけど亜矢が『困っている』と未来にヘルプするようにも思えない。


 道路は意外とすいていた。車はスムーズに進んでいくが、それでも遅く感じてしまう。
 法廷速度を守っているだけなのだからしょうがない。だけど今は一分一秒が惜しい。時計を見るとすでに十五時を過ぎていた。


 病院に着いた時には十五時十五分をまわっていて、全速力で病棟用エレベータに飛び乗る。
 病院内は比較的空いていた。すれ違いざまに冷たい視線を向けられていることに気づいていたが、申し訳ないと思いつつも足を止めることはできなかった。たぶん注意されても止まれなかったと思う。そのくらい焦っていた。
 エレベーターの中で切れた息を整えていると、右の腰辺りにズキンと痛みが走った。すっかり忘れていたが、俺は緊急手術をしてからまだそんなに期間が経っていなかったんだ。傷が開くようなことはないだろうけど、少し無理しすぎたようだ。



 九階病棟に着いて、ナースステーションの前を足早に通り過ぎる。
 あいつの部屋、九〇六号室はナースステーションに近い。一応ステーションから丸見えではないが、あまりうろついていると不自然だ。人が見ていないのを確認する。ネームプレートを見て、実父の部屋で間違いなかった。たまに部屋移動があるということを聞いていたから確認しておいた。
 
 ノックをせず静かに引き戸を開け、中の様子を伺うが、話し声は聞こえない。
 そのままゆっくり病室に入り、扉を閉めた。足音を立てないように中に入ると、ベッドで眠っている実父がいる。
 
 そっと入口の右にある洗面所の奥のスペースに身を隠した。


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Date:2013/11/19
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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