空色なキモチ

□ VOICE □

VOICE 178

第178話 不自然な態度

未来視点




 少し横になっていたら悠聖くんがポカリを持ってきてくれた。
 喉が渇いていたから助かった。喉の奥の灼熱感も大分引けてくる。


「急に倒れてビックリしたでしょ。ごめんね」

「倒れたって言ってもほんの一瞬だよ。上半身から崩れたって感じ」

「……ごめん」

「謝ることないよ。ショックだったんだろう」

「……どうなんだろう。お兄ちゃんの気持ちわからないでもないし、それよりも……」

「義父さんの恋愛感情のことのほうが?」


 悠聖くんに聞かれて素直にうなずく。
 間違いであってほしいと思った。そんなこと信じられないし、受け入れがたかった。


「いきなりあんなこと聞かされても驚くよね」

「……うん、でも」

「でも? 何かそういう素振りみたいなのあったの?」


 不意打ちでそう指摘され、わたしは少し黙ってしまった。悠聖くんが鋭いのすっかり忘れていた。
 少しの感情の乱れも読み取られてしまう。気をつけないといけないのに。誤魔化すためにポカリを少しだけ口にした。


「……あったんだね。教えてよ」


 やっぱりバレてしまっている。悠聖くんにかかると何をしても悟られてしまう気がした。
 心配そうに悠聖くんがわたしの顔を覗き込んでいる。鼻でため息をついて彼を見ると逃さないといった視線が向けられているみたいで。だけど真実を語るわけにはいかない。


「素振りって言うか……何度も『オレのもの』って言われたことがあるの。でもそれは自分の子供としての意味だと思っていたから」

「うん」

「だけど……『愛してる』って言われたこともあったの。ただ、それだけ」

「そうなの?」


 悠聖くんの声のトーンが大きくなった。
 少し驚いたような、そして不快感を表しているような表情にも見える。そう感じてもおかしくない。わたしだって同じ思いだ。


「どんな時に……いや、いい」


 悠聖くんがわたしから目を逸らして俯いた。
 彼の目は人の心を読み取れるような気がして怖かった。だから向こうから逸らしてくれてほんの少しだけほっとしていた。
 わたしは『それだけのこと』とこの話を締めくくったつもりだった。だけど悠聖くんの言いかけた言葉の意味を探るのが怖い。『どんな時に』と問われたその真相を考えたら、いやな予感しかしない。


「……悠聖くん」

「ごめん。いろいろ聞き過ぎた。ゆっくり休んで」


 ベッドに腰をかけていた悠聖くんが立ち上がった。
 明らかに悠聖くんの様子がおかしいのが気がかりだった。言っていることもかなり不自然すぎる。


「待って! 悠聖くん」


 部屋を出て行こうとするのを止めると、扉の傍でゆっくり振り返った。
 困ったような表情で無理に笑おうとしている悠聖くんのその顔が辛そうに見えてしまう。


「……何か……知って、るの?」


 探るように悠聖くんの様子を伺いながら問いかけてみるけど、首を横に振る。
 知られているわけない、だって誰も言うわけがないもの。あの時のことは、わたしとお兄ちゃんと修哉さんだけの秘密だから。
 出て行こうと扉の方を向き直った悠聖くんが、思いついたようにこっちを振り返る。


「あとさ、兄貴を庇うわけじゃないんだけど、未来が意識を失う少し前にこう言ってたんだ」

「え?」

「自分の人生をかけて未来に償いたい、って」


 そう言い残すと、困惑顔のまま口元だけを少しだけ緩ませて部屋を後にした。



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Date:2013/11/16
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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