空色なキモチ

□ VOICE □

VOICE 158

第158話 兄の告白

未来視点




 悠聖くんが気がついている?
 わたしの気持ちもお兄ちゃんの気持ちも。


「わたし! 悠聖くんのこと大切に思ってるよ?」

「うん」

「これからもちゃんと……」

「うん、それもわかってる。だから、あいつは自分から引いた」


 悠聖くんはわたしのそんな気持ちにも気がついているとお兄ちゃんは言う。だから自ら引いた。
 いつも優しい笑顔を向けてくれる悠聖くんが脳裏に浮かび、片手で口を塞いで声を出すのを押さえた。そうしないと大声で泣き出してしまいそうだった。


「わたし……悠聖くんが、好き」

「わかってる」

「初めて好きになった人なの」

「わかってるよ、未来。大丈夫」


 窓の外に視線を移し、悠聖くんとの出逢いから思い出していた。
 その時から悠聖くんは優しかった。

 入学式の後の自己紹介の時、ひとりだけ拍手してくれた悠聖くん。
 いつもわたしを守ってくれた悠聖くん。
 悪いことは悪いって怒ってくれた悠聖くん。

 わたしを愛してくれた……悠聖くん。

 鞄の中から新しい携帯電話を取り出して画面を見ると、悠聖くんからの着信履歴が残っていた。


「さっき一回鳴ったの……携帯」
 
「悠聖だろう? かけたの」

「うん。この着信で新しい携帯を持っていたことを思い出した。気づいたから希望が持てたの」


 この着信のおかげで絶対に助かるって思えた。勇気がわいた。
 やっぱり悠聖くんはわたしに優しくて、大切で、かけがえのない人なんだ。


「俺も未来に言わなければならないことがある」


 お兄ちゃんが運転しながら口を開いた。
 なんだか顔つきが険しい。よくない話なのかもしれない。


「今まで未来に言えなかったこと」


 小さいため息を漏らすお兄ちゃんの横顔がみるみる強張っていく。
 何かすごいこと言われるのかもしれない。聞くのが怖い。


「俺の鞄から手帳を出してくれる?」


 後部座席に置いてあるお兄ちゃんの鞄に手を伸ばす。
 鞄の中にはファイルがひとつと黒いペンケースと黒革の手帳があった。その手帳はボタンで留められていてすぐに開かないようになっている。


「手帳の一番後ろに写真が挟まっている。それを出してくれ」


 手帳を開いて一番後ろを見ると言われた通り、写真が一枚挟まっていた。
 少し茶ばんでいて、古い家族写真のようだった。
 あれ、この写真の女の子はもしかしてわたしで、真ん中は実の父。左の男の子は……。


「お兄ちゃん、これ……」

「裏を見て」


 お兄ちゃんはこっちを見ずにわたしをそう促した。
 写真を裏返しにしてみると、やっぱり少し茶ばんでいる。そこに小さくだけど力強く男らしい文字が残されていた。

  【しゅう十歳 みらい三歳】

 それをそっと指でなぞり、「しゅう」とその名をつぶやく。


「これ、小さい頃遊んでくれた……お兄ちゃんだ」


 懐かしい思いでその写真を見た。
 表に戻し、指先で写真のお兄ちゃんをそっと撫でる。なんだか暖かい気持ちが甦ってくるようだった。


「そうだ……でも」


 お兄ちゃんが言いづらそうに口ごもっている。そっちを見ると眉を寄せて辛そうな顔をしていた。


「それは俺じゃない」


 わたしは真っ直ぐお兄ちゃんを見た。
 お兄ちゃんは真っ直ぐ前を向いて運転している。


「俺は未来の本当の父親の息子じゃなくて、未来の義理の父親の……息子なんだ」


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Date:2013/11/06
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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