空色なキモチ

□ VOICE □

VOICE 136

第136話 小悪魔な妹

柊視点




 一日中いやな予感がしていた。

 昨夜あんなにうなされるほど怖い夢を見た未来が心配だった。よっぽど不安なことがあるんだと思う。
 昨日のバイト帰りからなんだか様子がおかしいのは気づいていたけど聞き出せなかった。


 今日は今日でバイト帰り迎えに行くとメールをしたら、友達と約束があるからひとりで帰るなんて返信してきた。
 友達と会った後、迎えに行くとメールし直したのに一向に返事が来ない。何を考えているんだ。絶対に何か隠しごとをしているに違いないのに。




 数学教務室で授業のプリントを作成していたら携帯が震えた。
 見ると修哉からの電話だった。教務室には誰もいなかったので取る。いつもひとりでも先生がいたら留守電対応にしているのだ。


『おう、今学校かい? 先生よ。今日暇なら飲みに行かね?』


 軽いノリの修哉の声に笑いを堪える。こいつの声はいつ聞いても安心する。


「修哉、今日暇ならちょっとつき合え。礼はたっぷりするから」





 十六時――


「学校前に呼び出すなんていい度胸だな」


 仕事中でスーツを着たままの修哉が校門前に立っていた。
 営業まわりをしている途中らしく、いかにも好青年風。うちの女子生徒達がちらちら修哉を見ていく。


「悪いな。修哉、今日仕事十七時までか?」

「ああ」

「じゃあこれ……」


 修哉の手に未来の赤いテディベアのキーホルダーがついている車のキーを乗せた。
 それを覗き込むようにして怪訝そうな顔をする修哉がそれと交互に俺を見る。


「……柊? 意味わかんねーよ」

「柊先生、さよーならー」


 校門前で話しているとそれなりに生徒の目に付くから声をかけられる。


「はい、さよなら」

「いい先生ぶりやがって」


 修哉がボソッとつぶやいた。


「うっせ」

「案外生徒に人気あるのな」

「新任だからだろ?」


 俺が校舎の方を見ると、修哉がため息をついた。


「で、何をすればいいの?」

「十九時にいつでも車を出せるよう待機しておいてほしい。その格好のままでいい。とりあえずおまえだって気づかれなきゃいいんだ」


 俺がそう言うと修哉が腕を組んで眉間にシワを寄せながら勝ち誇ったような表情を浮かべた。


「――未来ちゃんに……ってか?」

「よくわかったな」

「おまえの頼みごとなんて未来ちゃん絡みしかないだろう。わかったよ。オレにとってもあの子はかわいい妹だからな」

「悪い、助かる」

「まったく……とんでもない小悪魔な妹だ。いい大人を骨抜きにしやがって……」





 約束の十九時。

 俺は未来がいる図書館前から少し離れた電柱の陰に隠れていた。
 未来が出てくるのを待つために。




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Date:2013/09/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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