VOICE 133
第133話 苦しい思い悠聖視点
心臓がバクバクいっている。
布団に横になっているのに……尋常じゃない拍動。外に漏れてしまうのではないか不安になるくらい。そんなことありえないのに。
未来が眠りながらうなされて、僕が気づいた時には兄貴が未来を宥めていた。薄目を開けてその様子を伺っていたら、未来が泣きながら兄貴に抱きついたんだ。
それだけでもかなり心穏やかじゃなかった。
兄貴もしっかり未来を抱き寄せて……極めつけは未来の言葉――
「お兄ちゃん、大好き」
微睡んでいる時に言った言葉は本心だろう。
胸が苦しくてどうしようかと思ったけど起き上がることもできなかった。辛くて逆向きに寝返るのが精いっぱいで。
その『好き』は妹として兄を慕うだけものではないんだろう。そんな気持ちは手に取るようにわかるよ。やっぱり未来は兄貴が好きなんじゃないか。
そして兄貴も同じ思いでいる。それも僕の勘違いじゃないよね。
未来は兄貴が本当の兄じゃないって知ったのか?
兄貴には彼女がいるじゃないか。
未来も兄貴もなんなんだよ。ふたりともずるいよ。
未来だけでなく兄貴からも欺かれているのだろうか。結局僕ひとりが蚊帳の外なのかもしれない。まだ本人達に言われたわけではない、僕の思い込みなのかもしれないと必死で自分に言い聞かせるけど『そんなことあり得ない』ともうひとりの自分が言いくるめてゆく。
僕はどうしたらいい。未来から離れることも許されない、ずっとこんな気持ちを抱えて傍にいろと言うのだろうか。残酷すぎる。
起き上がってふたりを見る。
未来は兄貴の方を、兄貴も未来の方を向いて眠っている。今日は腕枕こそしていないけど。
一度諦めたのに、なんで二度もこんな思いをしないといけないんだ。
あの時より苦しいよ。
→ NEXT→ BACK
 
Information
Trackback:0
Comment:0
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学