空色なキモチ

□ VOICE □

VOICE 114

第114話 お見通し

悠聖視点




 兄貴が顔を洗いに行くと席を外してから五分以上は経っている。
 絶対に未来の様子を見に行っている。それしか考えられなかった。

 目の前の亜矢さんはワインを飲みながら料理をつまんでいる。あまり遅くなると彼女に怪しまれると思う。そんなことを考えながら、僕はひとりでドキドキしていた。

 それ以上に未来と兄貴がふたりきりになっている状況にも不安を感じている。


「――柊さん」


 亜矢さんがワイングラスを見つめて兄貴の名前をつぶやいた。


「未来ちゃんのところ、だね」

「……ですね」

「過呼吸起こした時、かなり心配していたからね……」


 ふふっと亜矢さんが笑う。
 ……そんなに怪しんではいない様子?


「亜矢さんは兄貴から未来のことをなんて聞いているんです?」


 気になっていることを兄貴の彼女である亜矢さんに聞いてみた。
 兄貴の前じゃ聞きづらい、というか聞けないから。亜矢さんは少し酔ったふうな様子でとろりとした目をさらに細めた。


「……弟の彼女で自分の妹?」


 ふふっと笑って亜矢さんがワイングラスに口をつけた。


「詳しいことは聞いてないけど。関係とかもよくわからないし、でも柊さんが未来ちゃんを大事に思っていることはわかる」


 再びグラスに残っているワインを一気にぐっと飲み干し、にんまりと微笑んだ。
 その赤い唇から目が逸らせなくなりそうだった。よく見る母親のそれとは違う艶やかさにドギマギしてしまう。僕が亜矢さんの空になったグラスにワインを注ぐと、軽く会釈をしてそれをまた口にした。


「気に、なりません?」


 いい感じで酔いが回っていそうな亜矢さんに意を決して尋ねると、ニッと口角だけを持ち上げる微笑みが返って来た。


「気になっているのは君でしょ? 悠聖くん」

「え?」

「私にお構いなく、見に行ってみたら?」


 なにもかもお見通しといった様子の亜矢さんがテーブルに頬づえをつき、意味ありげな表情で僕を見つめていた。



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Date:2013/09/18
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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