空色なキモチ

□ VOICE □

VOICE 59

第59話 安心からドキドキへ

未来視点






 翌日の朝。
 なぜかわたしは熱を出してしまった。


「結構あるな。身体、だるいだろう?」


 体温計を受け取ったお兄ちゃんが唸るような声を上げた。
 わたしの額に手をあてて顔をしかめる。その手が冷たくて上気した顔が気持ちいい。


 病院へ行こう、と言うお兄ちゃんに首を振って即断ると怪訝な顔をされた。
 眉間の辺りがモヤモヤして身体中の節々が痛い。でも病院には行きたくない。動きたくないのもある。


「市販の風邪薬飲むか?」


 うんうんと大きくうなずくと、お兄ちゃんが小さい薬箱から風邪薬を出してくれた。
 白い錠剤が三錠、手のひらに乗せられる。上半身を強い力で起こしあげられた。わたしはされるがままに起き上がってその薬を飲みこむ。喉がじんっと沁みるように痛い。 


「これを飲んでも明日までに解熱しなかったら病院に連れて行くからな」

「……」

「わかったな」

“ハイ……”


 無言の拒絶をもろともせず、念を押されて約束させられた。
 保険証が手元にないし、本当はいやだ。自費になってしまう。それを伝えるけど、後でファックスしてもらうからいいと簡単にかわされてしまった。


 薬を飲んだらすぐに眠くなった。
 ゆうべはあまり眠れなかったからこれならすぐに寝られそうだ。昨日もお兄ちゃんのベッドで一緒に眠らせてもらったけど、ドキドキして寝つけなかった。


 昨日の不思議な気持ちの理由がわからなくて。
 なんであんな気持ちになったのか、そんな自分を持て余していた。


 わたしのために傷ついているお兄ちゃんが辛そうで見ていられなかったのかもしれない。
 いつもより身近に感じて縋りたかっただけなのかもしれない。わからない。だけど、あの悲しげな表情と唇が、いまだにわたしの胸の奥を疼かせていた。





 目が覚めると十四時だった。


「――起きたか?」


 お兄ちゃんがベッドの左側に座って右端に眠っているわたしをじっと見つめていた。


“学校は?”

「大丈夫。休むって未来の担任の先生に連絡しておいたから」

“違う、お兄ちゃんの”

「あぁ、休んだ。丁度休みたかったからよかった」


 ニッとお兄ちゃんがいたずらっ子みたいに笑う。
 

“試験中なのに?”

「俺の試験じゃないし。うーん、まだ熱あるなぁ」


 わたしの額に手をあててお兄ちゃんが小さくため息をついた。
 お兄ちゃんに触れられるとドキドキする。額が熱いからその手は冷たく感じるのに、どんどん熱くなってゆくような感じだ。

 今までこんな気持ちになんかならなかったのに。
 一緒にいると安心って気持ちが、ドキドキするに変わってしまった。こんなの困る。


「少し食べられそう?」


 額に濡れタオルが乗せられ、冷たくて気持ちがよかった。
 目を閉じてゆっくり首を振ると、お兄ちゃんが再び小さいため息をついたのだった。


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Date:2013/08/22
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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