空色なキモチ

□ VOICE □

VOICE 49

第49話 幸せな時間

未来視点




 試験の前日、母からメールが来た。


  『明日から実家に行くけど、未来も行かない?』

 
 近々一度実家に戻ると、前に話していた。
 何時頃になるのか気にはなっていたけど、まさか試験日と重なるとは。試験じゃなければ学校を休んでも行きたかった。
 母の実家の思い出はあまりない。元々母はあまり里帰りをしないほうだった。たぶん交通費がかかるから、その理由が一番だろう。そう考えたら無理に着いて行かない方がいいのかもしれない。


 試験だからいけないと理由を返信で告げ、『おばあちゃんによろしく』で締めると、『お土産を買ってくるからね』と返信が来た。そんな気を遣わなくていいのに。
 

「メール? 誰から?」


 リビングで一緒に勉強している悠聖くんが、わたしの顔を覗き込んだ。
 メールの相手が母であることを伝えると、悠聖くんの表情が急に優しくなった。「誰から?」って聞いた時は強張った顔をしていたのに、相手が母だから安心したのかもしれない。なんだかうれしかった。

 携帯電話を置いてシャープペンシルを手にすると、悠聖くんがあたしの右手を握った。
 ゆっくり悠聖くんの顔がわたしに近づいてくる。ドキドキしながら目を閉じ、受け入れ準備万端だったのに――


「ただいまー」


 玄関の扉が開いた音と共に、お兄ちゃんの大きな声。
 鍵を開けられたのも気づかなかったからビックリして、飛び上がってしまった。


 慌てて離れ、勉強をしているフリを始める。
 なんだかそれがおかしくて笑ってしまう。悠聖くんもふき出しそうになりながら、わたし達は横目で目配せをしてお互い笑いを堪える。


「お、勉強してるのか。えらいな」


 お兄ちゃんがリビングに入って来た途端、わたし達を見てきょとんとしている。
 ふたりで笑っているから変だと思ったのかもしれない。


「おまえら、試験前日によく笑って勉強できるな?」


 そう言ってお兄ちゃんも笑った。
 とっても幸せな時間だった。


 わたしがいて、お兄ちゃんがいて、悠聖くんがいる。
 大好きなお兄ちゃんに、大好きな恋人。


 ずっとずっとこんな時間が続けばいいと思っていた。


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Date:2013/08/17
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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