空色なキモチ

□ VOICE □

VOICE 40

第40話 言説する兄とをそれを聞く弟

柊視点




 弟の悠聖に未来と一緒に暮らしていることがバレてしまった。
 まさかマンションの前に待ちぶせされているとは思わなかった。でもなんで急にマンションに来たのかはわからない。

 しかも未来の恋人がまさか悠聖だったとは。
 同じ高校に通っているけど、聖稜は生徒数も多い。同じクラスになる確率は低いだろうし、まさかこんなにも親しくなっているとは思わなかった。

 どこから悠聖に話せばいいのだろうか。




 悠聖は、俺が今の父の本当の息子じゃないことを知らない。俺を本当の兄貴だと思っている。
 もちろん本当の兄貴ではあるけど、父親が違うと知ったらどう思うだろうか。まさかこの事実をいきなり話さなければならない日が来るなんて……しかも俺の口から。

 きっと両親だって、悠聖にバレない限りは一生言うつもりはなかったはず。


「家に帰ってないのか?」


 リビングのソファを勧めると、悠聖はテレビの前の長ソファに座った。


「今日はまだ……」

「そっか、コーヒーでいいよな」


 うなずいた悠聖は両腿に肘をつき、上半身を預けるようにして頭を抱えている。
 何がなんだかわからない……そんな感じなんだろう。

 未来は悠聖に本当のことを言わないでほしいと願っていた。
 気持ちはわかるが、それを伝えないとこの家に未来がいることの理由が説明できなくなってしまう。かといって父親から性虐待を受けていたなんて知られたくないのは当然だ。

 しかもそれをしていたのが俺の実父だなんて悠聖が知ったら……。
 どう話しても悠聖にとっても未来にとっても辛い話になるはずだ。


 悠聖にコーヒーを出して右斜め前にあるソファに座った。
 辛そうな表情で悠聖が俺を見ている。


「兄貴」

「ん?」

「弓月のことを……好き?」


 コーヒーカップを両手にしっかり持って、その中身をじっと悠聖が見つめている。
 俺の気持ちの心配をしているのか。そう思ったら悠聖がかわいく感じた。
 弟が未来に対する俺の気持ちを気にしているだけだったら……いっそのことそこだけしか伝えなくていいのならどんなによかっただろうか。


「悠聖があの子を好きな気持ちとは少し違うけど……大切に思っているよ」


 悠聖が俺を見る。その気持ちに偽りはない。
 悠聖は賢くて勘が鋭い。嘘やごまかしはすぐにバレるだろう。

 俺が大きいため息をつくと、悠聖はコーヒーカップをテーブルの上に置いた。
 何から話したらいいか、悠聖が一番知りたいことは何か。それが優先されるべきなんだと思った。未来の気持ちを守ってやりたい、けど――


「そんなに話しづらいこと……なんだ」


 悠聖は俺の気持ちを察してくれたようだ。
 俺は小さくうなずいて、もう一度大きいため息をついた。こうしていても時間が無駄に過ぎるだけ。


 コーヒーをひと口飲んで、話す決意を固めた。





 まず話したのは、未来と知り合ったきっかけ。特に問題ないはずだ。悠聖も普通に聞いていた。
 次に、未来が俺の家にいる理由。あの子がどれだけ酷い目に遭っていたかを伝える必要がある。

 ごめん……未来。

 俺は、未来が受けていた辛い過去を知っている限り全て話すことにした。
 悠聖の、未来に対する思いを信じるほかなかった。




「……嘘……だろ?」


 俺の話を聞き、悠聖が驚きと悲しみ、そして怒りの混じったような表情を浮かべた。
 上半身が震えているようにも見えた。両膝をしっかり両手で掴んで、冷静さを保とうとしているようにさえ見える。


 そして、未来を酷い目に遭わせていたのが俺の実父であるということ。
 俺が今の父親の本当の息子じゃないこと。俺と未来が異母兄妹であることを時間をかけてゆっくりと話した。


 話しを全て聞き終えた時、悠聖の顔に絶望の色が見えた気がした。


 こんなふうに真実を伝えることになるとは。
 いつか話したことを後悔することになるかもしれない。

 でも今は、こうするしかなかったんだ。


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Date:2013/08/12
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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