空色なキモチ

□ VOICE □

VOICE 24

第24話 同居人は心配性

未来視点




 翌日の放課後、図書館に着いて仕事を始めると、瑞穂さんに呼び止められた。


「未来ちゃん、昨日大丈夫だったの?」


 そうだ! 昨日、柊さんは瑞穂さんたちと約束していたのにわたしのせいでダメにしてしまったんだ。
 慌てて携帯電話に文字を打って瑞穂さんに見せる。


『大丈夫です。すみませんでした』

「やだ、謝らなくてもいいのに」


 困ったように眉を下げて、瑞穂さんがわたしに笑いかける。
 昨日わたしがお風呂からあがった時、柊さんが電話をかけていた。あれは昨日の約束をキャンセルした連絡だったんだ。自分のことでいっぱいで気づかなかった。あとで柊さんにも謝らなきゃいけない。


「修哉に聞かされてビックリしちゃって。修哉って昨日、柊といた奴ね。似たような名前だけど……柊の奴が超かわいい高校生を送って行ったって言うから、未来ちゃんだなぁと思って。男に絡まれていたって聞いて心配しちゃった。帰りあんまり遅くならない方がいいんじゃない?」


 昨日の一見怖そうな人のことだ。確かに『しゅう』さんと『しゅうや』さんで名前がよく似ている。
 修哉さんはわたしのことをそんなふうに瑞穂さんに言ってくれたんだ。うれしいけど、何となく照れくさい。褒められたと思っていいんだよね。かわいいだなんて言われたことないから。

 心配そうな表情で瑞穂さんがわたしの持っている本をしまい始めた。
 こうやって瑞穂さんは時々わたしの仕事を手伝ってくれる。いろいろ気を配ってくれるいいお姉さん的存在だ。
 今は柊さんの家だから早く帰っても問題ない。心配をかけた上に、約束の邪魔をしてしまって申し訳ない気持ちになった。

 瑞穂さんにお礼の言葉を伝えようと携帯電話に文字を入れていると、急に手の中でそれが震えだした。
 メールの受信だった。見ると柊さんから。


  『今日は何時まで仕事? 帰りに迎えに行く』


 えっ? わざわざ柊さんが迎えにっ?
 オロオロしていると、瑞穂さんが眉間にシワを寄せてわたしを見ていた。


「何? 彼氏?」


 ぶんぶんと首を横に振って否定する。
 横目で探るように瑞穂さんが少しニヤッとしてこっちを見ている。疑っている表情だ。本当なのにな。
 慌てて柊さんに返信を打つ。


  『今日は十九時で上がります。早いから大丈夫』


 わざわざ迎えなんて悪いもん。十九時なら普通に中学生だって歩いている時間でしょ?
 うわっ! すぐに返信来たっ。柊さんメール打つの早い。


  『今日、職員会議で遅くなるから。その時間に行く。待ってて』


 柊さん、瑞穂さんにバッタリ会ってしまったら困るだろうに。
 携帯電話を見ながらつい、小さくため息をついてしまった。それを見ていた瑞穂さんがニコニコしてこっちをを見ている。彼氏じゃないのに。
 携帯電話に文字を入れて瑞穂さんに見せた。


『彼氏じゃないですよ。ちなみに瑞穂さん今日は何時上がりですか?』

「え? 私? 今日は十九時、昨日残り番やったから」


 そっか、昨日二十時に待ち合わせだった。遅番が二日連続ということはよっぽどの理由がない限りありえない。
 瑞穂さんが今日十九時上がりなら、鉢合わせしてしまう確率高い。柊さんに早くそのこと伝えておかなきゃ。


  『瑞穂さん、今日十九時上がりらしいので、かち合うとまずいからひとりで帰ります』


 これで大丈夫かな?
 柊さんだって瑞穂さんにバレた時、弁解するの厄介だろうから。わたしもかなり気まずくなるし。
 
 携帯電話をポケットにしまおうとした瞬間、また震えた。


  『じゃ十九時半に。図書館の前で待ってるから』


 柊さんはどうしてもわたしをひとりで帰らせたくないらしい。
 二十時前なのに帰宅を心配される女子高生なんてきっとわたしくらいしかいない。心配性なんだな。だけど、自分を気にしてくれる人がいて本当はうれしい。


 柊さんってお兄さんみたい。
 昔、遊んでくれたお兄ちゃんが、柊さんみたいな人に成長してくれていたらうれしいんだけどな。


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Date:2013/08/04
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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