VOICE 15
第15話 複雑な心境悠聖視点
携帯電話を見つめながら僕は家路につく。
彼女の、弓月未来のアドレスが宝物のような気がした。
これでいつでも彼女と繋がっていられる。それだけで胸が躍るようだった。こんな気持ちになったのは初めてのことだ。
言葉を発せられない彼女でも、これならいつでも僕に気持ちを伝えてくれるような気がした。
彼女が好きだ。
弓月がOKしてくれてうれしかった。
でも、少しだけ僕の心にわだかまりが残る。
それは告白をしたタイミング。
橋本先輩に強引にキスされそうになった後。
そして、特待生の件で弓月が僕に感謝をした時。
ふたつの条件が重なったその時に、僕は告白をした。
恐怖に怯えていた時、そして僕に感謝した時。
彼女は断りづらかったんじゃないだろうか?
考えてみたら、とっても卑怯なことをしたかもしれない。
しかも特待生の件の事実を彼女は知らない。
本当のことを教えてあげるべきだったのかもしれない。
そう思って……そうわかっていても、僕は彼女がほしかった。
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Thema:オリジナル小説
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