空色なキモチ

□ VOICE □

VOICE 12

第12話 狙われた彼女

悠聖視点




 部屋で勉強をしていたらシャープペンシルの芯が折れた。
 今日はこれで何度目だろうか。

 はぁ、とため息をつき、椅子の背もたれに寄りかかって上半身の伸びをする。
 今日は勉強がはかどらない。机に突っ伏して頭を抱え、そのままもう一度ため息をつく。

 頭から弓月の泣き顔が離れてくれない。さっきからずっとだ。

 急に泣き出したからすごくビックリした。すぐに泣き止んでくれたからよかったけども。
 忘れてたけど、ハンカチ貸したままだった。それはいいけど、あんなに無防備に泣かれるとすごく悪いことをした気分になって罪悪感に苛まれた。いや、実際悪いことをしたんだけどね。


 あの後、掃除を終えて図書館に行ったら、弓月が三年の橋本先輩にデートに誘われていたのもビックリした。ふたりは気づいていなかったけど、バッチリその現場を見てしまったのだ。

 橋本先輩ってかなり勉強できるしモテるという噂を聞いたことがある。本命は弓月なのだろうか。あれだけ美人だと言葉の障害もさして気にはならないってことか。



**



 翌日の放課後。

 学校の図書室に本を返しに行こうと向かっていたら、橋本先輩とその友達(?)らしき人が廊下の前を歩いていた。今から図書室へ行くのだろうか。

 近づきすぎないよう一定の距離を保って後に続く。


「橋本、あの彼女とはその後どうなの?」

「あの彼女? 誰だ?」

「聖女館高のお嬢様」

「ああ……どうもこうも」


 橋本先輩が笑いながらお手上げのポーズを取った。
 聖女館ってかなりのお嬢様高校で有名な学校だ。そこに橋本先輩の彼女がいるってことか?


「あんなのどうでもいいよ。もっといい子いるし」

「ああ、図書委員の一年?」

「うん」


 ……なんだ? この会話?
 橋本先輩とその友人の話を聞かない振りをしながら、そのまま後ろを歩き続ける。
 音の出ていないイヤフォンを耳につけて、さも音楽を聴いているようなカモフラージュをするのも忘れずに。


「話せない女だっけ? 弓月なんとかちゃん」

「未来」


 橋本先輩が弓月の名前を口にした。
 それだけで僕は緊張し、胸がドキドキした。


「かなり美人らしいな」

「ああ。特上」

「牛丼かよ?」


 友達にそう表現され、橋本先輩が笑う。その笑い方が酷く下品に見えた。
 弓月のことをこんなふうに話されるのはなんとなくいやな気分だ。美人だと思ってはいるんだろうけどランク付けしているようで腹立たしい。彼女をそんな対象にしてほしくなかった。それだけで彼女が穢されたような気がした。


「橋本が声をかければすぐなびくだろ?」

「いや、それがそうでもないんだよな」

「珍しい。百戦錬磨の橋本先輩が情けねぇな」


 橋本先輩が友達に背中を叩かれ苦笑いをした。
 なんだこいつ? 爽やかな秀才気取ってるけど、中身はただのたらしかよ?


「……今のところは、な」


 急に低い声になった橋本先輩。
 僕の心臓の鼓動がやけに速まっている。

 
 すごくいやな予感しかしなかった。


→ NEXT
→ BACK
    web拍手 by FC2
*    *    *

Information

Date:2013/07/29
Trackback:0
Comment:0
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://ageha572.blog.fc2.com/tb.php/131-e360de2f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)