空色なキモチ

□ VOICE □

VOICE 11

第11話 穢されていく身体

未来視点

性虐待シーンがあります。苦手な方はお戻りください。





 バイトを終えて、家についてからポケットに佐藤くんのハンカチが入っていることに気がついた。

 返しそびれちゃったんだ。でも洗って返した方が絶対にいいよね。明日洗濯をして、アイロンをかけてから返そう。学校に行ったらその理由をちゃんと伝えておかないと。

 
 ふすまの隙間から射し込む茶の間の光だけを頼りに、制服のブレザーを脱いでハンガーにかける。
 そんなことを考えていたら、いきなり部屋のふすまが勢いよく開けられた。


 驚いて振り返ると、義父が立っていた。逆光になり、その表情を伺い知ることはできない。
 眩しい光に照らされた義父は、そのままわたしの部屋に入って来て、後ろ手でふすまを閉めた。そしてすぐに部屋の中は暗くなる。
 再びふすまの隙間から射す茶の間の光だけしかなくなった自室に義父とふたりきり。そんな状況に胸が苦しいくらい痛いような感じがした。

 どうして? わたしがバイトから帰ってくるより先に母は家にいた。母がいる時に義父がこの部屋に入ってくることは滅多にない。それなのになんで?

 怖くてわたしは一歩後ずさる。


「なんだ、まだ制服か」


 義父が大きなため息を漏らした。
 ノックもせずに部屋に入ってくるなんて……ブラウスを脱いでいる時じゃなくてよかった。


「脱ぎなさい」

「――!?」


 小さな声で義父が言った言葉にわたしは息を飲んだ。隣の茶の間に母がいるはずなのに。
 ブラウスの胸元を押さえ、必死に首を振って拒絶するけど薄ら笑いを浮かべた義父がじりじりと近づいてくる。


「母さんは風呂に入っている。急ぎなさい」


 わたしが一歩下がると、義父は一歩近づいてくる。
 このままじゃ逃げ場がなくなる。どんどん追い詰められている状況に恐怖心でおかしくなりそうだった。


「大きい声を出されたくなかったら急ぐんだ!」

 
 苛立った口調で声を潜めて怒鳴られ、びくんとわたしの身体が硬直する。
 だけど義父の容赦ない射るような目がわたしを窮地に追い込んだ。逃げ場なんかない。さっさと言うとおりにしろと視線だけで訴えてくる。

 ギュッと目を閉じて襟元のリボンを外し、涙が流れそうになるのを必死で堪えてブラウスのボタンに手をかけた。ゆっくりボタンを外していると、義父が近づいてくる。


「――――!!」


 ブラウスを勢いよく前から後ろへはがすように脱がされた。
 そのまま抱きしめられ、左の首筋に義父の唇が這う感触に虫唾が走る。

 ……気持ち悪いっ。

 ブラウスの裾から義父の手が滑り込んできたのと同時に左の上腕にキスをされ、ブラのホックに義父の手がかかった。
 パチンと音がして、胸の締め付けがふわりと緩む。足が震えて立っていられなくなりそうだった。

 ――助けて! お母さん!!

 そう心の中で叫んだ時。


「未来、お風呂あいたわよ」


 母の声が茶の間から聞こえてきた。
 その瞬間、義父の動きが止まり、小さな舌打ちと共にわたしの身体が解放される。
 
 すぐに義父から離れて睨みつけると、自分が肩呼吸していることに気づいた。怖くてまともに呼吸することすら忘れていた。急いでブラウスのボタンをかけて部屋から飛び出す。


「未来、お風呂あがったらご飯にするからね」


 茶の間の奥の台所から母が話しかけてくる。俯いてその横を通り過ぎながら一回だけうなずいた。
 わたしの目から熱い涙がボロボロと零れ落ちた。それを拭いもせずに浴室へ駆け込む。


 お風呂で身体を何回も洗った。 
 皮膚が赤くなるくらいスポンジで擦る。痛いという感覚さえも麻痺するくらい何度も何度も強く擦り続けた。それでも、何度洗っても汚い。義父の唇の感触が身体に残っている。

 汚い! 汚い! わたしの身体汚い!

 浴槽の中でひとりで泣いた。
 助けて! 誰かわたしを助けて。



 ふと、本当の父のことを思い出す。そしてわたしのお兄ちゃん。
 今頃どこで何をしているのかな? もう一度逢いたいよ。

 でも……お兄ちゃんは、自分の父親と再婚したわたしの母をよく思わないよね。
 ましてやその間に生まれた子どものわたしなんて……。

 頭の上から降り注ぐようなシャワーのお湯と共に、わたしの目からいくつも涙が零れ落ちていった。


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Date:2013/07/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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