空色なキモチ
概要: 第十一話そして現在「辛かったんだな」 ぽんぽんと頭を撫でられ、続けざまによしよしと髪をわしゃわしゃされた。 あんたなんかに何がわかるのよと喉元まで出かかっているのに言葉にならなくて、しょっぱいものがこみ上げてくる。 やだ、やだ。泣きたくない。 ふるふると小さく首を横に振る。そんな私の心情に気づいたのか、彼が私の頭を自分の胸に抱き寄せた。 まるで「見ないから」と言われたような気がした。 一定のリズム...
概要: 第十話りるはの過去 ――古い過去の記憶がぶわっと時空を駆けめぐるように戻ってゆく。 それは封印した悲しみや喜び、楽しさや怒りもすべて含めて。 ただ『懐かしい』だけでは終わらない感情に私の身体はぶるりと震えていた。 目の前の細身なのにがっちりとした上半身裸体の男は何かを諦めたような苦笑いを浮かべてはいるものの、その瞳の奥に宿る光が見えたような気がした。 その光が怒りなのかそれとも喜びなのか、私にはわか...
概要: 第九話過去編・思い出の試合 とうとう合同練習最終日。 なぜか両顧問はまたも体育館にはいなかった。 反省会だと言っていたものの、監督する大人がいない体育館はそれはもう開放的だった。 だけど数日前に一年女子が軽い脱水を起こしたこともあって、無理はしないことと水分の補給をまめにするようにのお達しがあった。 どうも六中の女性顧問が美人だからうちの顧問が密かに狙っているのではないかという噂がまことしやかに...
概要: 第八話過去編・切ない「スイマセーン、部長サン、まーたシャトルが上にあがっちゃったんですけどぉー?」「……チッ」 他校の体育館のギャラリー部分にシャトルが乗ってしまった場合、自分では取りに行かずに責任をもってその学校の生徒が取りに行くという決まり事があった。 頼むのは誰にでもいいんだけど、俺はわざと君にばかり頼んだ。 六中の女子部員は俺に友好的でスマッシュやサーブの打ち方のコツを聞きに来たりしていたの...
概要: 第七話過去編・出会い「いちにっさんしっ!」「ごーろくしちはちっ!」 重いだけの仰々しい扉を引くと、女の子の高い声が耳に入ってきた。「にーにっさんしっ!」「ごーろくしちはちっ!」 最初のかけ声はひとりのもので、そのあとの掛け合いみたいに続く声はその他大勢のもの。 そのかけ声にあわせて体育館に張られたバドミントンのネットの前で女子生徒達が華麗に素振りをしている。 窓から差し込む日の光が彼女達の汗をきら...
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