VOICE 48
第48話 兄貴に嫉妬悠聖視点
夜、目が覚めた。
酷く喉が渇いて水を飲みに行こうと起き上がり、目を疑った。
兄貴の腕枕で心地よさそうに眠る未来の姿を目の当たりにしてしまったのだ。
一瞬嫉妬を覚えた。だけど、深呼吸をして心を落ち着かせる。
このふたりは兄妹、たまたま寝ている間にこういう体勢になってしまっただけだ。そう自分に必死で言い聞かせ、目を瞑ろうとした。
だけど、兄貴の右手がしっかり未来の右肩を抱いていて、その胸に心地よさそうに顔をうずめる彼女の姿が自然すぎて、どうにも落ち着かなかった。
このふたりはただの兄妹なのに、なんでこんなに胸が痛いんだ。
「未来……」
たまらなくなって、僕は未来の右側に一度座った。
顔にかかる髪をそっと耳にかけて、その右の頬にキスを落とす。
――ねぇ、未来。
君の恋人は、僕だよね?
この腕に抱いた君の温もりは僕だけのものだよね。
本当は、兄貴にだって唇の動きを見せたりしてほしくないんだよ。わかってほしい。
こんなにも自分が醜い嫉妬を抱いているなんて。
未来には知られたくない。だけど、これも本当の自分なんだ。認めざるを得なかった。
心も身体も、僕だけのものにしたい。そう願ってしまうんだ。
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